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経理領域にSAP ECC6.0を導入、他領域はほぼスクラッチ開発で基幹システムを
導入してきた住友ゴム工業さま。この度、全社かつグローバルでSAPシステムを導入することに
決定されました。そこでプロジェクトを成功させるために、まずは要件定義フェーズへ入る前に
クリアすべきポイントを相談しに来られました。








住友ゴム・根本氏:早速ですが、要件定義フェーズでクリアにしておくべきことはなんでしょう。

JSUG宇佐美:これから要件定義に入られると思うのですが、経理起点での全体設計が重要です。そしてまず、Chart of Accounts(勘定科目表)をきちんと決めておく必要があります。Chart of Accountsが曖昧なままシステムを構築すると、後になって必ずトラブルになります。また、これは経理だけの話ではありませんが、プロジェクトメンバーの中に、会社を変えていきたい熱い想いを持った人がいると良いですね。
住友ゴム・橋口氏:たしかに、これまでは個別最適を中心にシステム改修をしていたため、アドオンが多く入っていて、中身がよくわからないという課題もあります。現在、標準化に向けて、経理のキーパーソンが動いているところです。

JSUG宇佐美:経理起点で全体設計を行ったら、次はERP導入で実現したいことをしっかりまとめます。例えば営業部門を例にすると、「グローバル視点でこの商品がどの地域に何個売れてというデータが見たい。物や価格といったデータを一元化し、この情報を活用したビジネスモデルをつくりたい」といった絵姿です。

住友ゴム・根本氏:確かに、人・モノ・カネの「モノとカネ」は大切です。仮に一元化されていなくても、時間をかければ分かりますが、それでは先に世の中が変わってしまいますよね。

JSUG松田:私の経験でお話しすると、導入計画当時、自社品比率が下がっていて、同時に利益率も悪化していました。そこで材料を安く買って利益を出す施策を実現するために、購入品目をグローバルで共通定義し、「世界各所でどれだけ買っているか」「利益率はどうか」「品質はどうか」などを分析可能にしました。このような経営課題の解決を目的にしたSAP導入プロジェクトにおいては、経営層の支援を得ながら実行していくことが不可欠となります。
住友ゴム・根本氏:当社も今回のERP導入に関しては、社長をトップに、各事業領域の担当役員を集めた体制を構築しています。ERP導入の目的としては「社内・社外環境への適応性を向上させること」、人手に頼っている部分を排除し「人的リソースを有効的に使うこと」、そして「原価管理の高度化」や「ガバナンスの強化」があります。経営層はかなりバックアップしてくれる一方、「まだできていないの?」と聞かれる時もあり、自分事化してもらうためにもうまく巻き込んでいきたいですね。






JSUG宇佐美:ちなみに、ERPテンプレートについてはどう考えられていますか。テンプレートでは、ERPをどのように使うかといったプロセスだけでなく、コードについても定義します。
どのコードを国内で標準化するのか、それともグローバルで標準化するのかなど、検討されていますか。

住友ゴム・根本氏:マスタ・コードはグローバルで標準化したいと考えています。例えば原価関連のコード以外でも、私達が商品コードと呼んでいるタイヤのサイズコードも標準化したいと考えています。ちなみに、現状、製造工場が違うと同じ商品でもコードが変わります。

住友ゴム・橋口氏:4工場で同じものを作る場合、4種類のコードが生まれます。これを一つの商品として管理するため、例えば商品コードの更にその下に工場コードが存在するケースがあります。この他にも売り先や販路によって別物として扱う場合もあります。
このように、商品とコードが1:1の関係にない状況で、このばらつきに対応していたのが手作りのシステムだったわけですが、ERP導入にあわせこれらも統一したいと考えています。
JSUG松田:複数社でSAPシステムの導入を経験していますが、マスタ・コード統合・標準化を特に重視して取り組んだことがあります。会計、販売、物流、購買、生産・・といった各グループにくわえ、標準化グループを設けました。
ただ、コードを標準化、統一するのはなかなか骨が折れます。標準化グループを設けたとしても、「IT、システムの観点でこうあるべき」だけで、標準化を押し通すのは難しいですね。

住友ゴム・根本氏:一部拠点では標準化を実現しているところもありますが、それでも国ごと拠点ごとにいろいろ違いがあります。過去のERP導入時案件でも、IT部門主導でコード体系の見直しを図りましたが、うまくいきませんでした。

JSUG宇佐美:海外拠点のChart of Accountsは、どのような状況ですか?
住友ゴム・根本氏:国によって少しずつ異なります。最初にシステム導入した国をベースとして、他国への展開を実施してもらいましたが、グローバルでの標準化はできませんでした。新しい科目や費目の追加を行う際、日本の経理が承認するルート、ルールがなく、現地で自由に増やせてしまったことが理由にあります。
JSUG宇佐美:弊社での例ですが、海外拠点のコード体型が当初バラバラでした。これを統一しようと事業部門と何度も会話し、いろいろ検討しましたが、すでにカタログに載っていたり、お客さんへの影響を考えると変更はできないという話になりました。社内での手配用の内部コードだけでも統一しようと試みましたが、これも変換が大変であることから頓挫してしまい、最終的には、新商品から新たな標準化されたコード体系を使いましょうと、ゆるい感じのアプローチを取ったことがあります。
住友ゴム・根本氏:なるほど。いままさに弊社のマスタ分科会が、現場のコード構造を調べており、どう整理していくかを検討しています。生産・販売・購買といった各分科会に働きかけながら進めているので、参考にしたいと思います。




JSUG宇佐美:商品マスタはERPの中で肝となるキーコードです。だからこそ、これをグローバルで統一するというのは、良い取り組みです。経理系で重要なのは、Chart of Accountsのグローバル統一です。これも王道ですね。あとは仕入れ側のコード統一も重要です。仕入れ側からすれば、グローバルでまとめて購入、日本で購入、海外で購入と、どれが安く購入できるのかを比較したいはずですから、購入品のマスタ統一は必須です。
マスタやコードの管理・統一にはいろいろなやり方がありますが、本社などの中央機関で、コードを取得するプロセスを設けるのが良いです。
住友ゴム・根本氏:社内でもコードをグローバルで管理する部門を作らなければと動いています。この部門をうまく機能させないと、また現地で勝手にコードが増えてしまいますからね。
JSUG爲國:そうですね、私が担当している食品メーカーのグループにもコードセンターが存在しています。私達の場合は、グローバル展開時にコード体系はあわせました。頭2桁を会社コードとし、残り8桁は各拠点で決めるルールとし、10桁コードで運用しています。


住友ゴム・徳毛氏:しかしそれだと、似ているけれども違うコードがでてきて、統合はできませんよね。

JSUG爲國:そうです。しかしうちの場合は食べ物なので、基本的に製造した国で売るのが主で、グローバルで調達し合うというのは少ないです。ただマテリアルグループは定義しています。これにより例えばマヨネーズ類、ドレッシング類といった形でKPIの分析ができるので、当面は本社としては十分と考えています。先ほどのお話しは業種、業界、会社によっても目指すコード標準化が違うなと思いながら伺っていました。

住友ゴム・水野氏:コードセンターはIT部門が担当しているのでしょうか。

JSUG爲國:当初は、原料、得意先、仕入先などがバラバラだと困るということから、物流のメンバーが中心となりコードセンターを立ち上げました。今はITメンバーも入っています。

住友ゴム・徳毛氏:コードセンターというのは何人ぐらいの規模で運用されているのですか?

JSUG爲國:国内だけで、数名の体制です。取引先の数などで変わると思いますが。

JSUG宇佐美:購買部門とかモノがわかる部門の人が必要ですよね。IT部門だけでは絶対ムリです。

住友ゴム・根本氏:やはりIT部門だけでは無理ですよね。

JSUG松田:プロジェクトとしての対策の事例ですが、これまで、属人化や拠点毎の個別最適の風土などがあり、標準化が難しい状況にありました。そこで、「マスタ標準化のために委員会を作らなければ」と、マスタデータ管理委員会をプロジェクトの中に作りました。営業部門、調達部門、生産部門、会計部門といったそれぞれ、かなりのキャリアを持つ方々を集め、コードのルール決定や、ジャッジを行っています。

住友ゴム・水野氏:参考になります。ありがとうございます。


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