2020導入事例
アステラス製薬株式会社 (導入:オープンテキスト株式会社)
大量に発生する伝票と証憑を電子化し
経理業務のリモートワークを実現
保管されている大量の伝票と、添付されている証憑を短期間のうちに倉庫に移動する必要に迫られていたアステラス製薬。短い期間でプロジェクトを成功に導いたその理由はOpenText社にあるという。
導入前の課題
過去2 年間分の伝票を短期間で電子化し、利便性を高めたい
導入後のメリット
OpenText 社の協力で実現できた短期間での本番運用
バックオフィスのペーパーレス化で作業効率向上
電子化によりリモートワークでも柔軟な対応に成功
🔸短期間での遂行が求められていた電子化プロジェクトの導入背景
アステラス製薬では、本社建物に保管されている2 年間分の伝票を、できる限り短いスケジュールで電子化し、原紙を倉庫に移動させる必要に迫られていた。これを機に、日々大量に発生する伝票だけでなく、添付される証憑も電子化し、経理担当者が原紙を扱うことなくPC 上で確認、処理できるスキームを構築するべくプロジェクトは発足した。このプロジェクトは必ず短期間で成功させなければならない難しいものだった。
2017 年末当時、アステラス製薬では伝票や証憑といった紙の書類は外部の委託業者によって一次チェックを行った後、経理部による後続のチェックや部門問合わせ対応のため、本社に輸送し一定期間書類を保管していた。しかし、保管スペース縮小のため、本社での後続チェックの運用を保ちつつ、原紙を倉庫に移動させなくてはならなくなった。その期限は翌年2018 年6 月に迫り、短期間で書類を電子化させる必要に迫られたのだ。 ここで本プロジェクトに手を上げたのが、既にアステラス製薬でSAP と連携するArchive Server の導入と運用実績を持ち、さらにSAP 導入20 年という豊富な経験を兼ね備えたOpenText社だった。OpenText 社は短期間でプロジェクトを成功させるための提案を行い、結果、同社の提供するコンテンツ管理システム「SAP Archiving and Document Access by OpenText」の導入へと進むことになった。アステラス製薬によると、このベンダー選定は期限が残り5カ月と迫った2018年1月だったというから驚きだ。
🔸エンドユーザーとOpenText社の二人三脚でキックオフからわずか4 カ月での本番稼働を実現
アステラス製薬によると、前述のようにベンダー選定は2018 年1 月で、キックオフは2 月、リリースは6 月中旬とのことで実際の構築期間は4 カ月間と大変短いものだった。キックオフから毎月1、2 回、OpenText社との打ち合せを実施し、並行して開発に関するデータ作成、各種確認事項を細かくチェックしたという。この時、アステラス製薬側でプロジェクトを主導したのは、実際に運用が開始された際に実務担当となる経理部門の高島氏、宮本氏、そして情報システム部門の方々だ。
短期間での導入に成功した理由のひとつに、短期間で行うプロジェクトだからこそ、実務担当者が細かく、そして深くプロジェクトに参加した点が挙げられる。そして2つ目の理由として、OpenText 社の豊富な経験に基づく詳細な要件定義があったことも見逃せない。 プロジェクト開始当初、アステラス製薬の情報システム部門では「このプロジェクトは短く見積もっても半年はかかる」と想定していたが、OpenText 社とアステラス製薬がまさに二人三脚で進めた結果、4カ月でプロジェクト完了を迎えた。
🔸SAPの使い勝手を変えずに構築 新たな業務フローをスムーズに運用
アステラス製薬が選定したOpenText社の「SAP Archiving and Document Access by OpenText」は、運用が開始された直後に真価を発揮した。これまで使い慣れたSAPの操作そのままに運用できたからだ。 ここで話をベンダー選定時に戻す。当時アステラス製薬では、電子化された書類の確認方法についてSAP から確認するか、別のシステムから確認するかは決めていなかった。OpenText社の提案は「使い慣れたSAP の画面内に機能を追加する」といったもので、コスト面、スケジュール面などからも優位な提案だった。「もしSAP 外に新システムを構築していたら、運用フェーズに入ったとしてもスムーズに実務をこなせなかった」と、経理部の高島氏が語るように、使い慣れたシステム上に新たな業務フローを追加する方が、実務を行う担当者の負担は少ない。
SAP上に構築したことによるメリットは他にもあった。宮本氏によると、本プロジェクトで電子化する伝票と証憑は、誰でも閲覧できる書類ではないため、厳密な権限管理を行う必要があった。これもSAP 上に構築したことによって、スキャン担当、承認者といった新たな権限を別途設けることなく、これまで利用していた各種権限管理が利用できたのだ。 一方、宮本氏によると、実際に運用が開始されると、電子化されたことによって実務の効率が大幅にアップしたという。これまで会計監査に必要な伝票を提出する場合や、各部門から経理部門に問い合わせがあった場合、伝票を探すために倉庫へ向かい、目的の書類を探し、それをPDF 化して送るといった手順が必要だった。そのため即時に対応することが難しかった。今ではSAP で検索し、PDFとして出力し送付するだけで、大幅に時間が短縮できるようになった。最終的に原紙が必要となった場合でも、まずは検索して確認できるため、迅速な対応が可能となった。
🔸リモートワークにも力を発揮した経理業務の電子化。次に目指すは電子帳簿保存法への対応へ
伝票と添付されている証憑が電子化された新たな運用は、昨今必須となったリモートワーク環境下でも生かされた。「SAP Archiving and Document Access by OpenText」による電子化のおかげで、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う出社制限の中でも業務を止めることなく運用できたという。具体的なフローはこうだ。まず、同製品に含まれるEnterprise Scan 機能を使えば、紙媒体をスキャンした画像データ以外にも直接PDF を取り込むことができ、SAPの会計システムとPDF を連携させられる。加えて取引先のお客様の多くが領収書、請求書をPDF で送付されたこともあり、データ入力のフローはスムーズに流れた。
アステラス製薬ではOpenText 社のこれからのソリューションに期待をしている。それが「SAP S/4HANA」への移行や「電子帳簿保存法」への対応だ。実はOpenText 社はこれらの知見と経験が豊富なこともあり、アステラス製薬によれば、それも導入を決定づけた理由のひとつだという。現時点では、原紙保管の必要な過去11 年分の原紙が大量に倉庫保管されているが、これらもOpenText 社によりSAP の会計データと紐づけ、電子帳簿保存法の要件が満たされれば、保管の必要がなくなる。
大量の伝票を短期間で電子化するというこの困難なプロジェクトは、2 社の緊密な連携によって成功を収めた。基幹システムという企業活動の根幹を支えるシステムの導入にあたっては、豊富な経験と実績を持ち、日々の運用を細かくサポートしてくれるベンダーを選ぶことが、DX 推進の好循環を生むためにも重要といえる。
<<INTERVIEWEE>>
経理部 会計グループ
高島 真寿美氏
経理部 会計グループ
宮本 潤一氏
会社概要 アステラス製薬株式会社 創業:1923年 資本金:1030億100万円 (2019年3月31日現在) 主な事業内容:医薬品の製造・販売および輸出入
🔸パートナー企業
オープンテキスト株式会社