江崎グリコ株式会社(導入:オープンテキスト株式会社)
導入から8カ月で電子化率100%を達成
年間72,000枚以上の請求書支払処理を電子化し
働き方の多様化と業務効率向上を実現
多くの人に愛されるポッキー、ビスコなどの菓子類の製造・販売を手がける江崎グリコ。働き方の多様化に取り組む中でコロナ禍に直面した同社は、請求書の電子化を目指してOpenText Archiving and Document Access for SAP Solutionsを導入。導入から8カ月で請求書処理の電子化率100%を達成しました。さらに年間72,000枚以上のペーパーレス化とフルリモートワークによる請求書処理において16,000時間の工数削減を見込んでいます。
◆コロナ禍で全国がテレワークに移行
紙の請求書の電子化が必須に
江崎グリコは2022年に創立100周年を迎えた食品メーカーで、現在は国内グループ全10社、海外グループ18社でGlicoグループを形成しています。
同社は働き方改革の一環としてテレワーク環境の整備を進めていましたが、各部門で実施していた請求書処理の多くは紙ベースだったため、出社・押印・段ボール保管が必須で、テレワークでの対応が困難でした。導入プロジェクトのプロセスオーナー(ファイナンス部 経理グループ長)の中山満裕氏は次のように語ります。
「国内のGlicoグループでは、原材料などの直接材と機材、消耗品、広告などの間接材の購買において、月間6,000枚以上の請求書を処理しています。そのうちメール等で受け取る電子請求書は20%に満たず、80%以上が郵便やFAXで受け取る紙の請求書でした。紙の請求書は、各部門の担当者が支払伝票をSAP ERPで起票し、承認者が伝票番号と請求書を確認して押印後、伝票番号と紐付けて段ボールで保管するため、伝票処理者と承認者は出社が必須でした」
こうした状況で直面したのが、新型コロナウイルス感染症のまん延です。
「緊急事態宣言が発出されて多くの企業がテレワークに移行するさなか、伝票処理者・承認者は出社せざるを得ませんでした。そこで働き方の多様化と業務効率化に向け、請求書電子化プロジェクト(ファイナンス部6名、江栄情報システム2名からなるプロジェクトチーム)を立ち上げました」(中山氏)
江崎グリコ株式会社
ファイナンス部
経理グループ長
中山満裕 氏
◆理想と現状とのギャップを把握し
各部門を巻き込みプロジェクトを遂行
プロジェクトチームは2020年8月からTo-Be像を検討し、リモート対応、業務効率化、内部統制強化、電子帳簿保存法への対応の4点を定義。それを実現する請求書電子化ソリューションとしてOpenText Archiving and Document Access for SAP Solutionsを採用しました。導入プロジェクトのシステム領域のプロジェクトマネージャー(江栄情報システム株式会社)の小林周平氏は次のように語ります。
「決め手は、SAP ERPとの連携です。SAP ERPで入力した会計伝票と、PDF化した請求書を紐付けて保存できるため、SAP ERPの伝票照会画面から証憑を開くことができます。この機能を標準装備していたのは、検討した製品の中ではOpenTextだけでした」
2021年2月から要件定義に着手し、設計、開発、実装を経て同年8月よりSAPを導入している国内のグループ7社で請求書の電子処理をスタート。プロジェクトの初期で、具体的な運用方法・ルール、処理手順を確立。本稼働を控えた5月には全社展開に向けた説明資料、処理マニュアル、運用マニュアル、取引先への案内状などを作成しました。6月には全社説明会を実施し、本社のファイナンス部と株式・IR部が先行する形で電子化を開始。洗い出した課題の改善策を実施したうえでグループに展開していきました。導入プロジェクトの会計・業務領域のプロジェクトマネージャー(ファイナンス部)の床田和幸氏は次のように振り返ります。
「要件定義の前に、各部門の正確な現状と処理ニーズ把握のため、請求書処理担当者へのヒアリングと、ファイナンス部で保管している請求書類の現物確認を行いました。その後、理想の処理と現状とのギャップを埋めるための施策をプロジェクトチームで考え、実行していきました。業務効率と統制のバランスで迷った際は、最初に定めた4つの定義に立ち返り、方針がぶれることのないように心掛けました。グループ7社への一斉導入にはリスクもありましたが、コロナ禍で一刻も早い電子化が望まれていたことから、請求書処理担当者・承認者に自分ごととして捉えてもらうことで、スムーズに展開できるようになりました」
もちろん、システム導入だけで電子化が進むわけではありません。プロジェクトチームは一斉展開後の2021年8月から「電子化率向上活動」を開始。分担して各部門への運用支援・相談対応に当たりました。導入プロジェクトの電子化推進リーダー(ファイナンス部)の谷村洋子氏は次のように語ります。
「紙の請求書に慣れ親しんできた各部門の方々は、初めての電子化に不安を覚えています。心理的な負担を和らげるためにもリモート説明会を実施して質問に答えたり、オンラインで疑問点を入力してもらってそれに答えたりしました。電話や対面での質問も積極的に受け付けました」
この活動が功を奏し、2021年8月に31%でスタートした請求書処理の電子化率は、12月までに84%まで増加。2022年1月には98%まで上昇し、3月には100%を達成しました。
「プロジェクトの成功要因は、経営陣の迅速な判断と、プロジェクトの推進体制です。経営判断は、出社しなくとも業務を遂行できる体制の構築と、全社的なデジタルへの取り組みを重視した結果です。プロジェクトメンバーが各部門と直接コミュニケーションを取りながら、自発的な行動を促したことが早期の電子化につながりました」(中山氏)
江崎グリコ株式会社
ファイナンス部
経理グループ
床田和幸 氏
江崎グリコ株式会社
ファイナンス部
経理グループ
谷村洋子 氏
江栄情報システム株式会社
Supply & Value Chain Connect
小林周平 氏
◆請求書処理の業務効率化に貢献し
72,000枚以上のペーパーレス化を実現
現在、国内グループの伝票処理者と承認者約400名がシステムを利用しています。各部門からは「処理や承認作業が楽になった」「自宅で処理ができる」「紙の印刷や整理が不要になった」といった声が届いています。
「証憑を確認する際、ファイナンス部のメンバーが倉庫に足を運んだり、取引部門に対して請求書の送付を依頼する必要がなくなり、効率的に働けるようになりました」(谷村氏)
このまま請求書処理の電子化率100%を維持すると、2022年度は年間72,000枚以上のペーパーレス化が実現する見込みです。原紙保管するプロセスと比較し、各部門とファイナンス部担当者の工数は、国内グループのフルリモートワークによる請求書処理において年間16,000時間の削減を見込んでいます。
資料の検索性も大幅に向上し、監査対応や税務調査対応の負担も軽減。「監査法人にシステム権限を付与し任意のタイミングでPDF化された請求書をチェックしてもらえるので、段ボール箱を開けて現物を揃える必要もありません。監査法人側もリモート対応が可能となり、監査業務自体も効率化されています」(床田氏)
◆電子化率100%のキープに向けて
月次でグループの動向をチェック
請求書の電子化から1年以上が経過した現在も、ファイナンス部のメンバーは電子化率100%を維持するべく、月次でグループ全体の動向をチェックしています。
「導入効果をキープし続けるためにも、100%を切る部門については注意喚起するなど地道な活動を続けていきます」(谷村氏)
システム面では、支払伝票の入力効率化を進めていく予定です。
「SAP ERPに手入力している伝票の一部をExcelマクロにてまとめて入力し、PDF化した請求書と一括で紐付ける機能を実装中です」(小林氏)
400人以上にのぼる各部門の伝票処理者・承認者の意欲的な協力とプロジェクトメンバーの熱意あふれる活動により、短期間で電子化率100%を達成した江崎グリコ。同社のDX戦略であるデジタルでの可視化によるマネジメント、オペレーションの高度化、継続的に価値を生むシステム構築と組織運営に取り組む中で、今後も「健康への想い」をさらに進化させていくといいます。今回のプロジェクトから見えたのは、その強い決意と行動力です。
導入企業
江崎グリコ株式会社
創立:1922(大正11)年2月11日
売上収益:2021年12月末現在 連結3,385億71百万円 単独2,347億46百万円
事業内容:菓子、冷菓、食品、牛乳・乳製品の製造および販売
パートナー企業
オープンテキスト株式会社
URL:https://www.opentext.jp/products-and-solutions/products/opentext-suite-for-sap