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日本で初めての新薬上市に挑んだイドルシア
立ちはだかる日本独自の商習慣やそれを支えるJD-NET利用という壁を
医薬業界へ多数の導入実績を持つB-EN-Gと共に乗り越える


新薬販売の第一歩を日本に決定

壁は日本の商習慣や日本固有システム

 

スイスに本社を持つイドルシアファーマシューティカルズは、睡眠障害やくも膜下出血などに関連する医薬品を開発する製薬企業だ。2018年3月、新薬発売とグローバル進出の第一歩として、イドルシアファーマシューティカルズジャパン(以下イドルシア)を設立した。日本を選んだ理由は、元々同社が日本の研究者とともに基礎研究を行ってきたという関係があり、日本の患者に対していち早く革新的な医薬品を届けたいという思いがあったからだという。

日本での医薬品販売を前に、グローバルでは基幹システムの構築が進んでおり、採用されていたのはSAP S/4HANA(以下、S/4HANA)であった。日本でのS/4HANA利用も当然のこととして進んだが、日本での導入には、いくつかの壁があったという。中でも日本独自の商習慣である「卸」とのやり取りに用いるJD-NET(医薬品業界データ交換システム)への対応だ。

日本ではメーカーが物を売る際、販売店に直接売るのではなく、一度「卸(問屋)」を介すという習慣があるが、海外にはこういった商習慣がない。医薬品を病院や調剤薬局に届けるためには医薬品卸売会社(以下、医薬品卸)を介して流通させる必要がある。そして製薬メーカーと医薬品卸との間で発生する受発注データなどのやりとりには、JD-NETというEDIの仕組みを利用しなくてはならないのだ。

このため本プロジェクトでは、SAPに関する知見を持ちつつ、さらにJD-NETを始めとする医薬業界に特化した仕組みに精通した導入パートナーが必須だった。イドルシアは何社かに提案を依頼し、導入パートナーを検討したものの、どの提案も不安を払拭できなかったという。そんな中、耳にしたのがビジネスエンジニアリング(以下B-EN-G)である。

イドルシアが、事業の立ち上げ期にあたるため限られたリソースしかないこと、そしてグループ全体を対象としたSAPプロジェクトが並行していることなどをB-EN-Gに伝えたところ、B-EN-Gはこれを踏まえた提案を行ってくれたという。その頃すでにスイス本社から提案された導入パートナーがあったというが、本社への英語でのプレゼンなどもB-EN-Gがこなし、採用が決定、プロジェクトは開始された。

 

 

S/4HANAとJD-NETの連携部分を

多くの実績を持つB-EN-Gの導入パッケージを適用

 

日本でのS/4HANA導入範囲は、販売拠点として活動するのに必要な、会計・販売管理・在庫管理(FI/SD/MM)である。

課題となっていたS/4HANAとJD-NETの接続について、当初はグローバルチームが接続部分についても構築するという方針を打ち出していたというが、調査の結果、ゼロから構築も可能だが、新薬販売開始までのスケジュール上、それでは間に合わないと判断。B-EN-Gの提案する導入パッケージ「B-EN-Gp JD-NET Solution for SAP S/4HANA(以下、JD-NET Solution)」を適用した。

JD-NET Solutionは、B-EN-Gの持つ医薬業界への豊富な導入実績をベースに開発された、医薬品業界向け導入テンプレート「B-EN-Gp」のJD-NETに関わる部分を切り出してパッケージにしたソリューションである。先に説明したように、基本的にS/4HANA部分の構築はグローバルチームが行ったが、受注や出荷伝票、支払いといった領域や、請求、在庫管理といった部分はB-EN-Gが担当。パッケージには日本独自の項目追加、顧客の声を反映したカスタマイズされたレポートなども含まれている。

プロジェクトは2021年4月に開始された。コロナ禍における本プロジェクトは、基本的に全てリモートで行われたという。スケジュールは先に述べたよ

うに駆け足だったが、すでに発表済みの発売開始日通り、1年後の2022年4月に無事稼働した。

 


 


技術的なサポートはもちろん

柔軟性や調整力も発揮し、共に歩んだB-EN-G

 

今回のプロジェクトは、短いスケジュールのなかで、グローバルチームと日本側のチームが並行して作業を行う必要があったため、プロジェクトを円滑に進行するには両チームのコミュニケーションが重要だったと考えられる。さらに基本的な方針はグローバルチームが指揮を取っているため、日本側のチームは、グローバルチームへの説明や説得も必要だった。

例えば日本の法規制や商習慣や、JD-NETとの接続の必要性などについても納得してもらうため図や文書の準備を入念に行っている。当然英語での説明となるが、ここでB-EN-Gが活躍したという。資料の協力はもちろん、ミーティングに参加しての説明も行ったのだ。「グローバルチームに日本の状況を理解してもらい常に気にかけてもらえるよう、議事リードに努めました。技術的な部分についてはB-EN-Gから説明してもらいました。グローバルチームはプロフェッショナルとしての印象を持ったようです。日本側で伝えるべき内容は全て伝えられたと感じています」と八木氏は語る。

またプロジェクトの成功は、プロジェクトの進め方が良かったからだと要覚氏はいう。「私たちはスタートアップ企業ですから、これまでどのようにプロジェクトを進めてきたのかという、ベースがありませんでした。このためプロジェクトの方法論も、社内でB-EN-Gと共に知恵を出し合い、その結果、まず前に進んで細かい部分で後から直すべきところは直す、という方法で進めました。これが成功のポイントだと思います」。

話を聞くまで、医薬業界向けのJD-NET Solutionの存在がグローバル標準とも共存できるシステムを円滑に構築できる理由だと思っていたが、それだけでは無いようだ。プロジェクトの全体最適を考慮したプロジェクト運営が成功の要因だったといえよう。

 


運用はトラブルもなく使い勝手も良し

B-EN-Gとの新たなプロジェクトにも期待

 

稼働を開始したJD-NET Solutionによる基幹システムは順調に稼働し、現在までにトラブルは無いという。JD-NET Solutionに含まれるレポート機能も好評だ。「S/4HANAはこれまでも使っていましたが、標準レポートは個人的に使いにくい部分もありました。今回導入していただいたJD-NET Solutionのレポートは、必要な項目がひと目で確認できるため、効率がよく使いやすいです」と渡部氏は感想を話してくれた。

なおイドルシアでは未定ではあるものの、新たなプロジェクトが起きた際には、B-EN-Gに支援をお願いしたいという。これはプロジェクトの成功はもちろんだが、プロジェクトを進める上で感じた、B-EN-Gへの信頼が理由だという。これについて八木氏は「B-EN-Gは、柔軟性を持ってプロジェクトに取り組んでくれました。また、誰が何を担当するのかといった守備範囲には固執せず、B-EN-Gとイドルシア、お互いができるところを拾い上げ、協力してプロジェクトを成功に導くという姿勢が素晴らしいと感じました。ぜひまたプロジェクトでご一緒したいです」と語る。

B-EN-Gと進めたプロジェクトが成功を収め、無事日本市場での新薬販売が始まったイドルシア。今後新たなプロジェクトを両社が始める日も遠くなさそうだ。




導入企業

 


イドルシア ファーマシューティカルズ ジャパン株式会社

設立:2018年3月26日

資本金:9500万円




パートナー企業

 


ビジネスエンジニアリング株式会社

URL:https://www.b-en-g.co.jp/


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