2020導入事例
NECグループ (導入:日本電気株式会社)
DX変革に向けて自社グループ基幹システムの
SAP S/4HANA®への刷新と
SAP HANA®を活用したデジタル経営基盤の構築
―コロナ影響下のなかデジタル活用により計画通りプロジェクトを完遂―
NEC はDX 化を加速させるため、SAP S/4HANA®(注1)への刷新とSAP HANA®(注2)を活用したデジタル経営基盤の構築を決断。今回、海外10 カ国14 拠点のマイグレーションをコロナ影響下のなか計画通りにプロジェクトを完遂させた。その秘密はデジタル活用にあるという。NEC のDX 化に対する取り組みも合わせご紹介する。
導入前の課題
DX 化を進め昨今の新しい経営ニーズへの対応が求められたが、これまでの基幹系システムと、サイロ化された情報系を含むレガシーシステムでは実現が困難
導入後のメリット
経営のスピードアップと業務効率化
ビジネスプロセス全体を見据えた迅速かつ柔軟な事業遂行
ビジネス創造などの新しい経営ニーズへの対応
🔸基幹システムのSAP S/4HANA® への刷新
NEC では、グローバルベースのグループ企業で導入していたSAP® ECC6.0を「DX 変革加速」に向け、AI、機械学習、データ分析などインテリジェント機能を備えるSAP S/4HANA® にて刷新することで、ビジネスプロセス全体で様々なアプリケーションと連動しDX 化を推進していくことを決断。SAP S/4HANA® へのマイグレーションおよびSAP HANA® によるデジタル経営基盤を、海外10 カ国14 拠点で2020 年6 月より本番稼働開始した。
NEC は経営のスピードアップと業務効率化を目的に、2010 年から国内外のグループ会社にSAP 社のERP システムを導入し、販売・経理・購買といった基幹業務プロセス標準化や経営見える化を進めていた。 しかしこれまでの基幹系領域を超え、ビジネスプロセス全体を見据えた迅速・柔軟な事業遂行や、社内外のあらゆるデータ分析に基づいたビジネス創造などの新しい経営ニーズへの対応が求められる中、これまでのERP システムや会社・組織ごとに個別最適化された旧来の情報システムでは対応が困難な状況にあった。
このため、まず新しいコアとしてSAP S/4HANA® にマイグレーションし、さらに、ビジネスプロセス全体を通して上がってくる情報に加え、企業内外のあらゆる情報をデジタル経営基盤に集約、一元化することとした。これによりNEC グループの社員全員が同じデータを分析し、経営と業務の高度化を図ることによりDX 化を加速できると考えたのだ。
奥野 健氏 日本電気株式会社 経営システム本部 シニアマネージャ
🔸デジタル活用によるグローバルPJ の遂行
このSAP S/4HANA®マイグレーションは、海外10 カ国14 拠点のマイグレーションを限られた期間で実現しようという難しいものであったが、さらに追い打ちを掛けたのが、新型コロナウイルス感染症の拡大だ。しかし、結果的には2020 年6 月に移行を完了し、計画通りにPJ を完遂した。 まずマイグレーションで重要なのは企画段階で品質とコスト、スケジュールに影響する改修領域の特定とリスクの洗い出しにより精度の高い実行計画を策定することにある。本PJ では社内外の事例が限られた中でアビームコンサルティング(注3)のサービスである「Abeam Cloud® Conversion Express Factory for SAP S/4HANA® (注4)」などを採用し、品質確保・効率化により実行計画を短期に策定できたという。
そして煩雑で膨大な工数を要するテスト工程である。プロセスマイニングツール「Celonis」とインテリジェントオートメーションの「Blue Prism」を組み合わせた先進的な自動テスト方式「Digital Test」を採用し大幅な工数削減を実現した。奥野氏は「テストパターンは作るだけでも大変な作業です。これを自動化できたのは素晴らしい。大幅な工数の削減と、品質確保を両立できたのはDigital Test のおかげです」と語っている。 さらに新型コロナウイルス感染症の影響はすでに進めていた「働き方改革」の基盤であるデジタルワークプレイス環境をフル活用し、グローバルベース完全テレワークで当初の計画通りに、かつ業務上支障をきたさない品質で完遂したのである。 しかもこのような状況のなか、マイグレーションに合わせて機能を棚卸しして、40%近い機能を削減できたというから驚きだ。
伊藤 厚氏 日本電気株式会社 経営システム本部 主任
🔸SAP HANA® をベースとしたデジタル経営基盤の構築
DX化では社内外のあらゆるデータを集め分析し経営・ビジネスに活かしていくことが重要だが、大規模なデータをいかに効率的に管理し、さらにユーザーに有効に活用してもらうかが問題となる。 NEC では大容量データを高速に処理するインメモリーデータベースであるSAP HANA® を採用することで、目的別に用意していたデータベースを統合し、データ加工の工数を削減し、鮮度と精度の高いデータを活用できる先進的な情報系基盤を構築。さらに、大量データの分散処理や管理が可能なソフトウェアであるCloudera Data Platform(注5) を採用することでデータプラットフォームを二層化し、効率的かつ拡張可能で、使いやすいデータ管理を実現した。
そしてこのSAP HANA® 上に業務上意味があり再利用可能なデータを標準情報種として定義しデータマートとして実装。 従来の利用用途ごとに乱立するデータ構築/ システム化に起因する構築負荷やリードタイムあるいはシステム間の数値整合などの課題を解消し、柔軟に活用しビジネスに活かしてもらうことを狙っている。 しかしこのような基盤があっても、ただデータを集めただけであればユーザーのデータ活用は進まない。 しっかりしたデータガバナンスの仕組みが必要となる。
NEC は、グループ全体の情報の定義・品質管理に責任を持つ「データオーナー」、業務要件を基に実現シナリオを管理する責任を持つ「シナリオオーナー」、それを実装するシステムに責任を持つ「システムオーナー」を置き三位一体によるデータガバナンスの仕組みを作った。 さらにDX 化に向けたデータ活用を促進するための「GDMCC(Global Data Management Competence Center)」という組織を設置。 これにより、ビジネスプロセス全体から上がる情報や企業内外のあらゆる情報をデジタル経営基盤に一元化し、グループ社員全員がデータ分析をすることにより経営と業務の高度化を図り、DX化を加速することを狙っている。
🔸今後について
NECは、このSAP S/4 HANA® への刷新とデジタル経営基盤を今後グループ各社に順次展開するとともにビジネスプロセス全体の統合を進めて、NEC の持つAI など最先端ICT を活用したDX 化をさらに推し進めていく。 また、NEC グループの総力を上げて実現したこのプロジェクトの取り組みを活かし、アビームコンサルティングとの連携を強化し、社会や企業の課題を構想から実装・定着までのEnd to End で解決するDX 事業を加速していく。
(注1)SAP S/4HANA®:SAP社のインメモリーデータベース SAP HANA を基盤とする統合型インテリジェント ERP システム
(注2)SAP HANA®:SAP社のハイパフォーマンスなインメモリーデータベース
(注3) アジアを中心とした海外ネットワークを通じ、それぞれの国や地域に即したグローバル・サービスを提供している総合マネジメントコンサルティングファーム。戦略、 BPR、IT、組織・人事、アウトソーシングなどの専門知識と、豊富な経験を持つ約6,600名のプロフェッショナルを有し、金融、製造、流通、エネルギー、情報通信、パブリックなど の分野を担う企業、組織に対し幅広いコンサルティングサービスを提供。
ホームページ:https://www.abeam.com/jp/ (注4) https://www.abeam.com/jp/ja/expertise/SL214
(注5) Cloudera Data Platform:セキュリティとガバナンスを確保し、ApacheHadoop/Apache Hive/ Apache Spark等を含む大量データの分散処理・管理可能なオープンソースソフトウェア ※SAP、SAPロゴ、記載されているすべてのSAP製品およびサービス名はドイツにあるSAP SEやその他世界各国における登録商標または商標です。 ※アビーム、ABeam及びそのロゴは、アビームコンサルティング株式会社の日本その他の国における登録商標です。 ※その他本文に記載されている会社名及び製品名は各社の商号、商標または登録商標です。
会社概要 日本電気株式会社 創立:1899年(明治32年)7月17日 資本金:4,278億円 (2020年7月10日現在) 売上収益:2019年度実績 単独 1兆7,897億円 連結 3兆952億円 グループ主要事業:社会公共、社会基盤、エンタープライズ、 ネットワークサービス、グローバル
🔸パートナー企業
日本電気株式会社 DX事業推進本部