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「タレントマネジメント高度化」と「人事業務BPR」
相反する「二兎」を同時に実現
山善が挑戦したSAP SuccessFactors導入プロジェクト


山善がパーパスドリブンで目指す「ともに、未来を切り拓く」

 

本多:山善の経営理念についてお話ください。


江縁:当社では、人づくりの経営・切拓く経営・信頼の経営の3つを経営理念に掲げています。当社は特段の知財を持っているわけではなく、世界各国118の事業所で働く社員一人ひとりが、お客様のニーズに対応した価値を提供しています。この価値の源泉は人そのものであるため、経営理念の最初に「人づくり」を置きました。

「人づくり」により成長した社員が、現場の最前線で新しい価値を創造するため「切拓く」ことを現場で実践し、そしてお客様や社会から「信頼を得る」。これが当社の価値創造のストーリーです。

パーパスは「ともに、未来を切拓く」です。「ともに、」とは、「ありとあらゆるステークホルダーとともに」を表しています。これに「未来を切拓く」を掛け合わせ、全てのステークホルダーにとってサステナブルかつ、持続的に成長発展する社会の実現を目指す、という意思を込めています。


本多:パーパスドリブンの人財開発・組織開発戦略について教えてください。


江縁:新中期経営計画では、5つの事業部それぞれが、お客様に提供できる価値を組み合わせ、オール山善として最大の価値を提供することを目指しています。これが徹底して人づくりの基盤を強化し、人財育成の再起動を行うという戦略に繋がっています。

こうした取り組みの一環として、パーパスや経営戦略に基づいた人財開発・組織開発戦略を策定しました。まず「ともに、」からブレイクダウンし、「多様な知と経験」を抱え込み、力を結集するダイバーシティアンドインクルージョンを目指します。そして「未来を切拓く」ために、現場で自律的な挑戦・考動力を発揮してもらう。そのために会社は社員に対し、チャンスをドンドン与えます。

この「人と組織の戦略」を強く推進するために、「人事諸制度改革」「新人事制度を支えるシステム基盤整備」「人事部ケイパビリティの変革・向上の必要性」の取り組みが必要でした。そして、これらを実現するために選んだのがSAP SuccessFactorsです。

 


相反する二兎を同時に追うSAP SuccessFactors導入プロジェクト

 

本多:SAP SuccessFactors導入PJの概要や経緯について教えてください。


江縁:EYストラテジー・アンド・コンサルティングとともに進めた本PJは、システム構想策定支援を経て、「コア人事」と「目標評価管理」の導入と、給与部分のアウトソース化を一気に実施するもので、すべてを合わせ約1年で完了しています。

これまで人的資本経営に対する施策ができておらず、9割は焦りから始まっています。他社よりも周回遅れといえる状況でした。このままではさらに遅れると考え、会社全体で取り組みはじめたのです。ここから挽回し他社に追い付くために「二兎」を追わざるを得なかったというのが本音です。


本多:両極ともいえる「人事業務BPR」と「タレマネの高度化」の取り組みを二兎と表現されていますよね。

一般的には、「人事業務BPR」は効率的かつ正確な業務が求められるのに対し、「タレマネの高度化」は100満点というより意思決定の精度を上げる情報提供が求められます。

そのため、「人事業務BPR」は現場要件へ対応しすぎてTCOが増加する傾向にあり、上限をつけた「キャップ型ボトムアップアプローチ」が適切です。一方で「タレマネの高度化」は経営・人事・上司・従業員がそれぞれ使うので、その要件を調整するための「調整型トップダウンアプローチ」が必要です。

正反対のアプローチが求められるため、難易度の高い取り組みとなりました。

さらに、最後にそれぞれの社内キーマンの特性を意識し、PJ体制を組成していくことも重要です。



 

プロジェクトの成功は、コミュニケーションとトライアル

そして強いリーダーシップにあり

 

本多:PJで苦労したポイントについて教えてください。


江縁:どちらも重いテーマである「二兎」を同時に進める点です。特にタレマネは周回遅れでしたから「そもそもタレマネとは?」といったレベル。このため本に書いてある見栄えのよいタレマネではなく、山善が山善のための目指すべきタレマネを作ることからはじめています。

タレマネでは大きく2つのポイントがあります。まず経営層と十分に話を握ることです。私たちはこれまで成果・役割主義を採用していましたが、これを挑戦・考動主義にポリシーチェンジ。そして経営層に対し、人づくりの経営を改めて開始すると握ったのです。

次に現場との一体感です。人づくりの経営を再起動するためには現場とタッグを組む必要があるからです。これに伴い目標管理制度を「挑戦・考動申告制度」に改めました。従来の「上から言われたことをやる」をやめ、自発的に掲げた挑戦目標を申告するという制度に変えたのです。この制度では上からの指示ではなく、下は自分のやりたいことを上に申告して挑戦するという制度で、現場と一体となり変革を進めました。

新制度を本番導入する前に1年間、トライアルとしてExcelベースで制度を実施しています。この期間に見えてきたさまざまな課題は、システムを構築する際に反映しています。

一方、人事業務BPRは、これまで100%の品質で業務を行ってきました。効率化を考えるとどうしてもサービスレベルを落とさざるを得ない部分があり、どこまで落とせるのかという判断も難しいと感じました。そこで現場と密にコミュニケーションを取り、サービスレベルを落とす・落とさないといったジャッジをタイムリーに実施しました。

 

本多:今一度PJを振り返って「成功のカギ」と感じている要素を教えてください。


江縁:リーダーシップですね。弊社では自分から他者に声をかけ、皆を巻き込み取り組むという、個々のリーダーシップがあります。これが今回のPJに良い影響を与えたのだと考えています。

また今回のPJでは、全員が変革の必要性を認識しており、長く議論を続けていたため、予め共感を得られていたことも成功の要因だと思います。これにメンバー全員の持つリーダーシップがうまく組み合わさり、大きな変革を自分たちの手で成功させようと、全員がPJに喜びを感じていたと思います。

 

本多:今後の展望をお聞かせください。


江縁:ともに、未来を切拓く2030年に向け、弊社は多様性を徹底的に追求していきます。このためには、組織そのものも社員が働きやすい文化に変えなくてはなりません。これらを実現していくため、今回のPJで完成したシステムを有効活用するとともに、さらに進化させていこうと考えています。

導入企業

 

株式会社山善


創立: 1947年5月30日

資本金:7,909百万円(2023年3月31日現在)

従業員数:3,215名(連結:2023年3月31日現在)

JSUGサポーター

 

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社


URL:https://www.ey.com/ja_jp/people/ey-strategy-and-consulting

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