各社バラバラの購買システムに起因するLGグループの課題
LG電子、LG化学、LGディスプレイなど15の系列会社を持つLGグループでは、グループ各社が異なる購買システムを利用していることにより、さまざまな課題を抱えていた。
課題は大きく2つある。まず担当者のスキルに依存した購買業務だ。これはそれぞれの購買システムにおいて手作業が多いことと、購買業務がデータ化されていないことにより、経験や勘に頼っていたことが理由だ。このため担当者のスキルによって業務の質にばらつきがあることや、意思決定について、客観性や公正性が足りないといった懸念もあった。
そしてもう一つ課題となっていたのが、グループ各社の購買業務において、シナジー効果が得られない点である。
これらの課題は、グループ各社が同じ購買システムを利用することで解決すると考えられたが、簡単には一本化できないという問題もあった。例えばグループ各社が取り扱う品目が大きく異なるため、購買システムの共通化が難しいという理由だ。
購買システムの統一から生まれたLG CNSのソリューション「SINGLEX」
これらの問題を解決するために選ばれたのはLG CNSだ。LG CNSはグループ各社に対し、40年近くに渡りシステムの開発や運用を行っていて、各企業と密接な調整が必要である今回のプロジェクトでは、この経験が活かせると期待されたからだ。また同社が持つ、SAPソリューションやOracleといったグローバル標準のソリューションに対するノウハウも、LG CNSが選ばれた理由の一つである。
そして購買システムを共通化するにあたり、さまざまな角度から選ばれたのがSAP Aribaだ。SAP Aribaは、調達や購買業務を一元管理して効率化するSaaSであり、その最も大きな特徴ともいえるのが、世界最大の企業間ネットワークを持つことにある。そのネットワークとはSAP Business Network(旧Ariba Network)だ。他の企業と購買業務などをシームレスに連携できる本ネットワークは、世界190カ国以上、数百万社のサプライヤーが参加している。グローバルにビジネスを展開するLGグループにとっては、まさに最適なソリューションといえるだろう。
一方、SaaSであることから、グループ各社の要件実現には限界があった。そこでLG CNSが考えたのが、SAPソリューションの追加による機能補完だ。
まずSAP Analytic Cloud(以下SAC)を利用し、購買実績の分析とシミュレーション機能を追加、そしてSAP Business Technology Platform (以下BTP)を組み合わせ、グループ各社の要件やベストプラクティスを反映すため、機能を開発したのである。
こうして実現した新たな購買システムで、LGグループの抱えていたさまざまな課題は解決した。例えばSACにより、購買担当者の勘に依存してきた業務は客観的に遂行可能となり、業務の公正性が大きく向上。また、システムをモニタリングし情報を提供できるため、ミスやエラーの発生時も早急な対応が可能となった。購買業務をより精巧に、そして高い完成度で遂行できるようになったのである。
この新たなシステムを実現するために生まれたのが「SINGLEX」だ。SINGLEXは、SaaSに柔軟性や拡張性を求める多くの企業に対して提供される、LG CNS最新のソリューションである。カスタマイズ可能な柔軟なSaaSということから、同社はSINGLEXをハイブリッドSaaSと呼んでいる。

SINGLEXでSaaSを柔軟にカスタマイズ、SAP Aribaの自動化をも実現
SINGLEXの特徴を、LGグループへの導入を例に紹介しよう。まずSINGLEXによる業務の標準化だ。LGグループは多様な産業に携わっているため、取り扱う品目が多岐にわたる。このため各社共通の購買システムを利用するには高いハードルがあった。
SINGLEXでは、さまざまな品目毎にSAP BTPを利用してテンプレートを作成し、SAP Aribaに対して直感的なデータ入力を実現した。こうしたテンプレートはSINGLEXを導入した企業側で作成できるため、品目の追加や変化があっても、わざわざ開発会社に改修を依頼する必要がないことも特徴だ。
テンプレートは、項目が異なることの多い、海外のグループ会社を含めた業務の標準化にも役立つ。LGグループは、まさにこのテンプレート機能により、グループ内の標準化を実現したのである。
SaaSをカスタマイズできる点も、SINGLEXの大きな特徴だ。通常SaaSを利用するのであれば、企業が望む機能を追加したり、画面を変更したりといったことはできないが、SINGLEXであれば、柔軟にカスタマイズが可能となる。
LGグループへの導入では、SAP Aribaの自動化を実現している。「購買業務は、EUや日本では手作業で行うことが多く、SAP Aribaも手作業が前提です。しかし韓国では作業の自動化が主流。このためSINGLEXでSAP Aribaの自動化を実現しました」とクォン氏は言う。なおSAP Aribaの導入を決定した際には、自動化が出来ないことに対する反発もあったのだが、無事SINGLEXによるカスタマイズで解決した形だ。
購買業務における業務効率化を目指す企業であれば、購買業務の自動化という韓国企業の常識を、SAP Aribaで実現できるSINGLEXは、見逃せないソリューションといえるだろう。

複数のSaaSを統合できるSINGLEX、日本企業にも最適なソリューション
購買業務を中心にSINGLEXを紹介してきたが、それだけにとどまらない。例えばLGグループでは、HRにSuccessFactorsを導入しているが、これもSINGLEXによってカスタマイズされ、LGグループ内の標準化を実現しているのである。この他にも30以上のソリューションをSINGLEXで統合し、カスタマイズをも実現している。
クォン氏は、SINGLEXは日本企業にも最適なソリューションだと、自信をのぞかせる。クォン氏によると「韓国の製造業は昔から日本の製造業を手本にしてきました。だからこそ似ている部分も多い。」とのことだ。なおSINGLEXは、日本の法令への対応や、日本企業から要望された機能の追加などを行っており、サポート体制も準備万端。
LG CNSによるとSINGLEXは、今後もさまざまな機能を追加していく予定であり、例えば購買業務におけるAIの活用などを開発中とのことだ。なお今後、こうした新機能はアップデートとして提供されるとしている。
もしいま、グループ企業間で業務の標準化を目指していたり、カスタマイズが出来ないことを理由にSaaS導入を見送っていたりするのであれば、SINGLEXの導入を検討してみてはどうだろうか。必ずやLG CNSが、SaaSとの架け橋になってくれるはずだ。
