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安定稼働・柔軟性・保守運用負担の低減を狙い
新たな基幹システムとしてJALが選んだ「HEC with AWS」
オンプレミスからクラウドへと飛翔する移行プロジェクト


迫る基幹システムの保守切れ、次期基幹システムの検討を開始

 

日本航空(以下JAL)は、グループ全体でESG戦略を中長期の成長戦略として位置づけ、商品サービスやビジネスモデルの大きな転換を進めている。例えば従来のフルサービス事業だけでなく、LCCや非航空領域の事業についても注力している。

同社ではIT戦略についても変化を試みている。これまでオンプレミスで構築してきたITインフラ領域において、SaaSやクラウドの活用を進めているのである。さらにDRを意識したシステム設計や、マネージドサービスの利用、エンドユーザーコンピューティングなども推進している。こうしたIT戦略により、情勢や事業環境の変化に対し、クイックに対応できるIT環境を構築しようとしているのだ。

こうした中、JALがオンプレミスで構築していた基幹システムの保守切れが迫っていた。保守切れはSAP ERP6.0のみならず、関連するDBやオンプレミスのOSについても同様に期限が近づいており、これを機に次期基幹システムの検討が始まったという。

 


JALのIT戦略と業務に最も適したS/4HANA+クラウド=HEC with AWS

 

複数のERPを比較した結果、同社の業務や構想にもっとも適しているという理由からSAP S/4HANA(以下S/4HANA)が選ばれた。決算の早期化や、部門別採算といった要件に合致していたことや、これまでSAP製品を使ってきた中で得た信頼性も採用のポイントだったという。選定においてはそれ以外にも、業務システム移行の観点や、パッケージのシェアについても考慮されたという。シェアに関しては、SAPがERP業界ナンバーワンであり、同社の最新パッケージS/4HANAであれば、今後データ活用を進めようと考えた場合に、豊富な機能の活用が期待できると考えたからだ。

インフラは、同社のIT戦略と足並みを揃える形で、検討当初からクラウドとされたものの、オンプレミスによる構築との比較も行っている。結果、クラウドが保守運用におけるコスト面などで大きなメリットを持つことや、今後も続くであろうIT人材不足などを考慮し、保守運用の任せられるクラウドに決定したという。

採用したクラウド基盤はAWSだ。これについて淺子氏は「これまでAWSを周辺システムで利用していたため、大きな信頼がありました。また周辺システムとのセキュアな接続を実現できる点、AWSの災害対策を含む可用性、高い拡張性なども選定理由となっています」と語っている。



想定より短く済んだダウンタイム、移行プロジェクトにも貢献したAWS

 

新たな基幹システムの構想がはじまったのは2019年で、この頃S/4HANAの採用を決定している。続いて伝票起票といった周辺システムや、分析などの詳細部分に関して検討を始め、同時にインフラの検討も行ったという。

2020年6月にキックオフが行われた本プロジェクトは、eJALHANAプロジェクトと呼ばれ、関わったのは述べ120人弱。JALに加えJALインフォテックや導入ベンダー、SAPなどの協力を得て進められた。

新たな基幹システムは、S/4HANAをSAP社がAWS上でマネージドサービスとして提供するいわゆるSAP HANA Enterprise Cloud (以下HEC) with AWSであり、周辺システムも、JALがCIEL/Sと名付けたAWSを利用するクラウドサーバ上に構築している。HEC with AWSとCIEL/Sはセキュアに接続され、SAP Analytics Cloudなども含めてシングルサインオンを実現している。なおCIELという愛称は、フランス語で「空」を意味する言葉で、JALグループにおけるシステムの土台となっているクラウド基盤である。

プロジェクトの対象となった領域は財務会計(FI)、管理会計 (CO)、購買管理(MM)、販売管理(SD)などであり、これまでBWを利用していた分析には、SAP Analytics CloudとSAP Analysis for Microsoft Officeを採用し、基幹システム刷新に伴いレポーティング基盤を刷新している。

新基幹システムへの切り替えに伴うダウンタイムは、11月の連休中を狙って行われた。移行はAWSの用意する移行ツールCloudEndure Migrationを用いたことや、さらにAWSの素早いサーバ構築機能を活かして中間サーバを用意するなどした結果、ダウンタイムは想定より短く抑えることが出来たという。

プロジェクトは新型コロナウイルスが猛威を奮っていた時期と重なったため、フルリモートで行われた。リモートだからといって大きな問題はなかったというが、実際に人が集まることができないために、正確な情報が見えにくくなることや、情報が伝わっているかといった懸念から、淺子氏はなるべく多くの領域のミーティングに参加し、正しい状況を把握するといった工夫をしたという。こうした工夫もあり、フルリモートでのプロジェクトでありながら、予定通り完了し、2021年11月にリリースされた。




 

JALのDX基盤として活用が期待される新基幹システムは稼働率100%を達成

 

今回のプロジェクトにより、JALはS/4HANAというDXのプラットフォームが構築できた。SAP Analytics Cloudなどを活用したデータ分析にも意欲を見せていて、すでに路線収支に関連する分析を行っており、徐々に対象領域を広げていきたいという。

分析に関しては、BWからSAP Analytics Cloudに変わったものの、引き続きExcelベースで行うことができるため、業務を大きく変える必要はなかったという。淺子氏によれば、今後どのような分析に活かすかは検討中だと言うが、SAP Analytics Cloudによるデータの可視化や、ダッシュボードなどについて「見える化・気づきを得る」という点が優れていると実感しているといい、これらを活用し、さらなる分析を進めたいとしている。

新基幹システムが稼働して1年が経ったが、HEC with AWSやAWSを利用するCIEL/Sを含め、大きなトラブルなく安定稼働しているといい、現在までの稼働率は100%だ。年度決算も滞りなく完了できたという。そして基幹システムの運用保守に関するコストは、オンプレミスからAWSとなり、想定通り低減できたという。

なお周辺システムにおいて、サーバ負荷が高まった時期があったが、AWSの力によって不具合なく乗り越えている。高負荷時に一時的にサーバリソースを追加し、基幹システムを停止させずに乗り切ったのだ。その後徐々にサーバリソースを減らし、最適なリソースに設定できたといい、こうした高い拡張性と柔軟性もAWSの魅力だという。なお稼働状況のモニタリングも、AWSのリソースモニターが大いに役立っているという。さらにAWSについて淺子氏は「AWSへの満足度は、インフラとしてもツールとしても、とても高いです。まだ利用できていないAWSのサービスやツールについて、今後活用していきたいと考えています」と、その魅力を語る。

JALが選んだクラウドサーバはAWSであり、同社によって「空」と名付けられた。今後JALはAWSとSAPシステムを活用し、DXという空を高く飛び続けるに違いない。



導入企業

 

日本航空株式会社

設立:1951年8月1日

従業員数:12,726人(2022年3月現在)

連結従業員数:35,423人(2022年3月現在)

事業内容:定期航空運送事業及び不定期航空運送事業、航空機使用事業、その他附帯する又は

               関連する一切の事業




パートナー企業

 


アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社

URL:https://aws.amazon.com/jp/


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