2020導入事例
三井情報株式会社 (導入:UiPath株式会社)
APIだけではつながらない
複数のシステム連携を
UiPathのRPAで実現
UiPathのRPAプラットフォームを活用することで、基幹システムのSaaS移行をスムーズに実現。SAP S/4HANA Cloudと様々なアプリケーションが連携可能に。
導入前の課題
新基幹システムへのスムーズな移行。API 連携が難しい場合でも1日1万件以上のデータ処理の自動化
導入後のメリット
複数アプリケーション間の連携、大量処理が可能
20~30人分の作業がRPAで自動化。人為的ミスも削減
3ヶ月ごとのSAP S/4HANA Cloudのバージョンアップにも柔軟に対応
🔸「クラウド・バイ・デフォルト」への挑戦
三井情報株式会社(以下:三井情報)がSAP S/4HANA Cloudへの移行に当たって考えたのは、政府が推進している「クラウド・バイ・デフォルト」という基本方針だ。情報システムの構築を行う際にクラウドの活用を第一として考えるという方針の中で、三井情報も基幹システムを全てSaaSへ移行することを考えた。その結果、次世代クラウドERPである「SAP S/4HANA Cloud」を採用し、株式会社セールスフォース・ドットコムが提供する顧客管理・営業支援システム「Salesforce Sales Cloud」(以下:Salesforce)や、すでにサービス利用していた他の社内システムと連携させることになった。しかしそこで問題になったのは、「SAP S/4HANA Cloud」 とこれらの社内システムとの連携が、現状提供されているAPI だけで成立するものではなかったことだ。
「現状のSaaS版ですと、我々が連携させたい項目のAPIがないため、人による画面操作が必要な場合もありました」と語るのは壹岐氏。今回、三井情報が目指していたのはもう一つ「シングルインプット・マルチアウトプット」の実現だ。例えば、SAP S/4HANA CloudとSalesforceを連携させることで、営業部門はSalesforceに入力するだけでデータが複数のシステムに連携し、入力の手間を省いて省力化することを目指した。しかし、SalesforceからSAP S/4HANA Cloudにデータを移すためのAPIがまだ整備されておらず、どうしても人による「転記」作業が必要になったという。その入力作業は1日に1万件近くになる。それらを人力で行うには1日に20〜30人が張り付いて作業を行う必要があり、正確にデータ入力を行うという観点でも現実的ではない。そこで検討することになったのが、RPAを使ったデータ連携の自動化だった。
壹岐 文一氏 三井情報株式会社 ソリューション技術本部 クラウドソリューション部 第四技術室 室長
🔸UiPathという選択肢
UiPathのRPAプラットフォームは、エンドツーエンドで業務の自動化を可能にする。あらゆるアプリケーションと連携が可能で、UiPathの開発ツールを使いワークフローを作成することで、これまで人が行なっていたPC上の作業等を自動で実行できるようになる。今回はUiPathを使うことで、Salesforceに入力したデータをSAP S/4HANA Cloudをはじめ複数のアプリケーションへ転記する業務の自動化を実現した。
「UiPath を選んだ理由はSAP S/4HANA Cloudとの相性です。安定して動作し、3ヶ月に1度のSAP S/4HANA Cloudのバージョンアップに柔軟に対応できるのでUiPathに決めました。」と壹岐氏。入力画面のレイアウトが変わっても、UiPathであればクリックするボタンの位置などをセレクターと呼ばれる UI要素を選択するためのパスで指定できるので、影響を受けずに高い精度を保つことができる。SAP S/4HANA Cloudの短いサイクルで行われる機能拡張、変更に柔軟に対応できるのも、UiPathの魅力だ。他にも短い期間での実装実績があることや、アプリケーションの相互連携を可能にする多くの共通部品が無料で提供されていること、UiPath製品であれば技術者を調達しやすいことなども考慮して、UiPathに決定したという。
伊丹氏は「あとはSAP S/4HANA CloudのAPIが拡充された場合にUiPathであれば画面入力以外にもAPI連携に対応しており、処理の選択肢が増えるのもポイントでしたね」とも語っている。 UiPathを導入している業務は4つ。1つ目はジョブコントロールのような要領で、会計処理の夜間バッチを条件指定して指定時間に出すというもの。2つ目は在庫引当など従来社員が手でやっていた業務を一部自動化するというもの。3つ目が今回の1番のポイントでもある、Salesforce からSAP S/4HANA Cloudへ受発注情報を転記していく業務。そしてその他に請求書や注文書の印刷など、細々とした業務が4つ目となる。
「RPAは人間が操作する作業を自動化することが多いと思いますが、今回はさらに拡げた領域までRPAでの自動化に挑戦しました。例えば、バッチ処理や、システム開発で必要になる並列処理や例外処理などの自動化です」と自動化業務選定のポイントを語る壹岐氏。当初から課題であった大量データ処理も安定稼働ができており、SAP S/4HANA Cloudの画面操作の自動化も問題なく動いているそうだ。
伊丹 暢氏 三井情報株式会社 ソリューション技術本部 クラウドソリューション部 第四技術室
🔸短い期間での実装を実現
今回同時進行していたSAP S/4 HANA Cloud 導入プロジェクトのスケジュール関係上、RPA 導入プロジェクトは開始からリリースまで3ヶ月といった非常に短い期間での開発が必要だった。絶対に遅延できないというという前提のもと進捗管理する必要があり、外注先を探している時間もなかったため、導入は三井情報内で行われることになった。壹岐氏は「3ヶ月で納めなければならない状況下で、他社にまるまる任せることは難しく、自分たちで汗をかきながら走るしかないと思いました」と、当時の苦労を語る。
「そのような状況でしたが、UiPathはウェブ上に公開されている開発のためのドキュメント類や共通部品が潤沢で、スムーズに開発ができました。結果としてUiPathを選択してよかったと評価しています。」 さらに導入の助けになったのは、UiPath 社の非常に手厚いサポート体制だったという。グローバル企業でありながら、日本法人のテクニカルサポートをはじめとしたしっかりとした支援体制により、導入サポートが行われた。
🔸さらなる自動化を目指して
現在UiPath による自動化は、SaaS移行したSAP S/4HANA CloudとSalesforce のシステムの連携にとどまらず、ServiceNowやBoxとの連携もすでに実装済みという。「システムをSaaSへ移行した場合、一般的にはAPIで直ぐに連携できると思われているかもしれませんが、実際に作ってみると今回のようにAPI連携できないケースもありました。そういったラストワンマイルの部分はある意味泥臭く、一つ一つRPAで自動化していく必要があると思います」と伊丹氏。今回の案件によって、その知見が得られたことは大きな経験になったと言えるだろう。
今後、三井情報はRPAによる自動化領域をさらに拡げていく予定だ。「今回システム間連携を実現し、バックエンド処理として利用するという、ある意味応用的なRPA の活用方法でしたが、結果として十分に実現できることを確認できました。また、導入当初よりも製品知識が一歩高まったと自負しています。今後はよりスマートな設計や実装方法にすることで、さらに保守の工数を削減し、さらなるシステムの効率化ができないかを詰めている最中です。」と壹岐氏。まずは安定稼働を目指した最初のフェーズは終わり、これからはさらなるUiPathの活用方法・可能性を検討中だ。
会社概要 三井情報株式会社 設立:1991年6月20日 資本金:41億13百万円(2020年3月末現在) 従業員数:2,063名(2020年3月末現在 連結)
🔸パートナー企業
UiPath株式会社