
SaaSに自社の業務とデータを合わせ込む「Fit to Standard」のアプローチに
アジャイルの考え方を適用して業務変革の柔軟性と早期性を両立。
導入はイテレーティブに、稼働後は「保守」ではなく「継続的な変革」を
クライアントが継続的にメリットを享受する、アジャイルの考え方を適用したアプローチ
「業務に合わせてシステムを作る」から「システムに業務を合わせる」へと発想を転換したFit to Standardアプローチは、近年、日本企業でも積極的に選択されるようになりました。とはいえ、長らく自前のシステムを使ってきた日本企業にとって、ドラスティックな標準化は簡単なことではありません。そこでシグマクシスが提案するのは、このFit to Standardをアジャイル流に進めて行くというアプローチです。
アジャイル開発とは、スピーディにソフトウェアの価値をユーザに届ける開発手法です。2001年に米国で発表された「アジャイルソフトウェア開発宣言」によると、アジャイルは①プロセスやツールよりも個人と対話を、②包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを、③契約交渉よりも顧客との協調を、④計画に従うことよりも変化への対応を、という4つの価値観を重視するとされています。当然ですが、「プロセスやツール」「包括的なドキュメント」「契約交渉」「計画に従うこと」に価値がないということではなく、より価値をおくべきことがあるという意味合いです。
シグマクシスは、この4つの考え方をFit to Standardに適用し、イテレーティブ(反復的)なアプローチで、①個人との対話を重視したチェンジ・マネジメントの実施、②SaaSならではの既に動くソフトウェアである実機による業務検証、③お客様が一人称として参画するイネーブルメント、④導入期間に加え本番稼働後も変化に対応できる継続的変革を支援し、より迅速かつ確実なSaaS導入とその価値の享受に貢献しています。
私自身は、長きにわたりアジャイル開発プロジェクトに注力してきたのですが、2020年よりS/4HANA Cloud Public Edition案件にも参画するようになり、新たな方法論「アジャイル×Fit to Standard」を創出しました。海運業のお客様向けプロジェクトをはじめ、いくつかのプロジェクトでこの方法論を取り入れて推進したところ高く評価され、今年3月には、SAPジャパンから「SAPマイスターIQ 2025」として表彰されました。革新的な手法として認められたこの方法論について、ご紹介します。

「導入前の5つのフェーズ」全般にわたり“螺旋状”に推進し、業務変革を効率的に
導入フェーズでは、「Discover」「Prepare」「Explore」「Realize」「Deploy」の5フェーズ全般にイテレーティブ(反復的)なアプローチを採用します。これはフェーズごとに直線的に進むものではなく、お客様が徐々に変革への理解を深めながら前進していく、いわば螺旋状のアプローチです。「螺旋状」とは、各フェーズで「目的と領域の合意」⇒「方向性の理解」⇒「具体的施策の検討」⇒「試行と検証」⇒「伝播と移行」というように、変革のステージを徐々に上げていくことを示しています。
1つ目の「Discover」は「目的と領域を合意」するフェーズです。事業領域やバックオフィス領域に共通するプロジェクトの目的を明確にし、経営層のコミットメントを得ます。たとえば「属人化の解消」「AI活用」「保守費用の削減」など、目指す成果を共有し、業務変革の対象領域を特定します。
「Prepare」は、プロジェクト関係者が変革の「方向性を理解」するフェーズです。プロジェクトのロードマップを定義し、マネジメント層とのミーティングやキックオフはもちろん、業務現場社員などプロジェクト参加メンバーとのワークショップを行い、チェンジ・マネジメントを開始します。重要なのは、このタイミングから業務現場社員にSaaSの標準機能を操作してもらい、自分たちの業務をどう変えていかなければいけないかを理解いただくことです。既に動くシステムが用意されているSaaSならではのアプローチです。
「Explore」フェーズでは、SaaSの標準機能を実際に操作しながら、自社業務を適合させるための「具体的な施策を検討」します。業務に沿った操作を通じてSaaSで「実現できること、できないこと」を実感し、業務変化点を洗い出し、対策を検討することで、業務の実担当者自らが主体的に変革に取り組むことになります。
「Realize」は、「試行と検証」のフェーズです。より実業務に近い設定やデータを用いて、新しい業務プロセスを検証します。システム的にはコンフィグ設定・データ移行などをテストします。ここでも実業務の担当者が実機を操作し、自社の仕入先や品目を使用して取引を登録するなど、実際の業務ケースを繰り返し当てはめることで、最適化を進めます。
最後の「Deploy」フェーズは「伝播と移行」です。本番稼働に向けた業務・データ・システムを移行します。運用マニュアルや体制を整え、業務変革をプロジェクト参画メンバーが中心となって全社へと広げていきます。その際の羅針盤となるのはDiscoverフェーズでマネジメント層が確立した変革コミットメントです。
このように、業務を繰り返し体験しながら理解を深めていく「螺旋型」のプロセスを踏むことで、業務現場のお客様それぞれの自発的なイネーブルメントが促進され、それが最終的な成功につながります。

SAPのアップデートや新機能をフル活用し、「保守」ではなく「継続的な変革」を
本番稼働後には「Run」フェーズがスタートします。一般的に「保守」と捉えられがちなフェーズですが、シグマクシスは、Runは「継続的な変革」と考えています。この方法論では、100点で本番稼働を迎えることを目指さず、重大かつ緊急でない課題については稼働後に運用と並行して解決していきます。稼働直後はSaaSの価値を60~80%程度享受する状態で始め、徐々にその割合を上げ続けていくという考え方です。そして、SAPが半年に1度行う大型のバージョンアップのタイミングで、業務の見直しや新機能の活用などを提案し、お客様のアップデートを支援し続けていくわけです。
保守というと保ち守るというイメージがありますが、保つのではなく、業務変革を続けてSaaS活用の価値を高め続けていくことを目指します。バージョンアップのタイミングでは、追加された新機能を使って業務の切り替えや見直しが発生するため、ここでも実機を使った検証を行い、業務が陳腐化しないよう継続的に変革を実行していきます。当社のコンサルティング力を活かして、機能やデジタル技術の進化、法制度の変更、ビジネスチャンス環境の変化などを見据えながら、変革への提案を積極的にしていきたいと考えています。しかし、業務変革プロジェクトで最も重要なのは、お客様ご自身が一人称視点で向き合えるかです。だからこそ私たちは業務変化点を自ら発見できる、実機に触れる体験の提供を重視しています。
実際に、これまで導入したお客様からは「組織としての考え方が変わった」「自分たちで決めて進める文化が育った」といったコメントを頂いています。
シグマクシスが提案する「アジャイルの考え方を適用したFit to Standard」は、SaaS時代における業務改革の最適解といえるアプローチです。SaaSの標準機能に業務を合わせることでシステムの複雑化を防ぎ、そこにアジャイルを取り入れることで、柔軟性と早期性を実現します。導入後も、半年ごとに行われるSAPのアップデートを活用し業務とシステムのアップデートを進めることで、継続的にお客様を支援いたします。



