サプライヤの参加を促しスムーズな導入、
発注業務の大幅な効率化を実現
サプライヤポータル製品として、SAP Business Networkの導入を決定
「世界中の人々の健康に貢献する」この想いを胸に、天然調味料、インスタントティー、機能性食品等を開発・製造・販売する日研フード。2021年にSAP ERP6.0からSAP S/4HANA®へのコンバージョンを実施した。さらなる業務改善に向け2022年よりSAP Business Networkの導入検討を開始し、同年12月に導入を決定、そして2023年1月から導入プロジェクトを開始し同年8月に本稼働に至った。導入は、これまでコンバージョンや運用保守サポートにて、すでに信頼関係が築けているソフテスにお願いした。
検討期間に約1年を要したが、これは「➀自社業務にフィットするか」「➁サプライヤの賛同を得られるか」に重きをおき、丁寧に検討を重ねたためである。
「➀自社業務にフィットするか」は、様々なプロセスパターンを考慮し、ソフテスから提案を得ることで検討を進めていった。約50項目にわたる質問および課題をExcelシートにまとめ、SAP Business Networkでの実現案を深掘し、ソリューションが確実に自社の業務課題の解決に繋がる、という確証を得ることを重視した。
次に「➁サプライヤの賛同を得られるか」については、自社の取引先であるサプライヤからSAP Business Networkへの参加の可否をアンケートで回答いただき、目標の業務改善効果が得られるかを調査した。
アンケートは、全260社のうち主要な取引を占める約20社のサプライヤに依頼した。場合によってはサプライヤから質問を受けることもあったが、ソフテスから回答作成の支援を受け回答し、サプライヤの理解を促した。賛同の回答を十分に得ることができ、費用対効果が得られることを確認した上で導入プロジェクトに踏み切った。
また、コロナ禍以後、サプライヤでも「脱・紙業務」の機運が高まっており、デジタル化への抵抗は少なかったが、一部のサプライヤからは「参加を様子見したい」「処理の一部のみ対応する」という声もあった。このようなサプライヤに対しては、他のサプライヤの参加が進んだタイミングで再度交渉や、運用に慣れた頃に追加のプロセスについても依頼することで、外堀を埋めながら利用を促す方針とした。
ソフテス独自の導入手法「ユーザダイレクト方式」
導入プロジェクトでは、まずソフテスが日研フードのSAP S/4HANAとSAP Business Network環境の連携設定を行う。日研フードへ検証環境が引き渡された後は、ソフテスの提案するシステムフローをもとに、日研フードが主体となり両社で動作検証や業務プロセスの検討を行い、発生する課題に対するソリューション提案をソフテスが行った。これは、ソフテス独自の導入手法である「ユーザダイレクト方式」にもとづく進め方であり、業務の中核を担う資材部ユーザ2名を「パワーユーザ」としてアサインし、「パワーユーザ」とソフテスコンサルタントが協働でシステム・業務両面のデザインを行うことでプロセスを組み上げていった。
SAP Business Networkはクラウドで提供されるSaaS型ソリューションであり、高頻度で機能の改善が行われるが、ユーザがソリューションを手足のように使いこなせる程にスキルを身に付けなければ、せっかく提供される新機能が活かされないままになってしまい、まさに「宝の持ち腐れ」になってしまう。
ソフテスの「ユーザダイレクト方式」では、「パワーユーザ」がSAP Business Networkを徹底的に触って検証することで、ソリューションの「標準機能」に対する理解を深めることができ、Fit to Standardの考え方が自然と身に付くだけでなく、将来提供される新機能を活かした業務デザインを継続的に行うスキルを獲得することができる。
パイロットサプライヤ4社に対し、検証協力を要請
バイヤーである日研フードによる検証だけでは、プロセスパターンを完全に洗い出すことはできない。SAP Business Networkを本番運用で主に使用するのはサプライヤであり、サプライヤの検証協力がなければ、本稼働に踏み切れない。
そのため、本導入プロジェクトでは検証に協力いただくパイロットサプライヤを4社選定した。選定の基準は、発注パターンを網羅できるような取引を行っているサプライヤであることとした。
パイロットサプライヤそれぞれに操作説明会を行い、実際に本番業務で発生している注文内容と全く同じ内容のオーダーを、SAP Business Networkの検証アカウントにて処理してもらい、本番業務に即した検証を行った。
この時点で生じた考慮漏れのパターンも、本番稼働までに対応案を検討し、2023年8月の本稼働時には大きなトラブルもなく業務を開始することができた。
本稼働から1年経過後、現在の状況
2024年8月現在、全取引サプライヤのうち約8割がSAP Business Networkによる電子取引への参加が完了し、導入当初に目標としていた参加率に達した。残りの約2割は取引ボリュームの少ないサプライヤが大方のため、大部分の発注オペレーションが電子化されたことになる。
この高い参加率は、サプライヤ1社1社に対して丁寧な説明を行ったことによるものである。参加を依頼するサプライヤに対しては、SAP Business Network導入の背景と、稼働後の業務変更点やシステムの操作方法についての説明会を開催し、本稼働前には必ず検証アカウントを使用した動作検証を1社1社と実施するなど、個別コミュニケーションを丁寧に行ったことで、サプライヤの協力を引き出すことに繋がった。
また、導入効果の面では、郵送・FAX・メールなどサプライヤごとに異なる手段で行っていた発注オペレーションがSAP Business Networkに統合されたことによって、大幅な業務効率化を実現することができた。
加えて、サプライヤによる回答納期が、日研フードの希望納期よりも遅れるようなオーダーを一覧で可視化するクエリレポートをSAP S/4HANAで開発したことにより、納期調整や納期遅れの監視に関わる業務も効率化できた。
今後は、本導入プロジェクトではスコープ外とした「請求」プロセスの追加導入についても検討していく。SAP Business Networkを経由してサプライヤから請求書を提出してもらうことで、資材部で行っている請求書照合業務が効率化される見込みだ。
2023年の導入時点では提供されていなかった機能、例えば日本の締め請求に対応できる「サマリインボイス」という新機能が提供され、さらに使いやすくなったと聞く。
今後も新たに提供される機能を積極的に活用することで、さらなる業務効率化が期待できるだろう。
導入企業
日研フード株式会社
創業:昭和39年(1964年)3月31日
本社工場:静岡県袋井市春岡723-1
事業内容:畜肉・海産物・農産物等を抽出加工した天然調味料や、インスタントティーを中心とした粉末飲料、亜臨界水抽出技術を活用して作る機能性素材の開発・製造・販売