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創業124年 老舗企業 森永製菓が挑む改革
「資本コストを意識した経営」と
「グローバルガバナンス強化に向けた変革」


森永製菓が目指す資本コストを意識した経営とは

 

東京証券取引所はPBR(株価純資産倍率)が1倍割れの企業に対し、株価水準を引き上げるための改善策について開示・実行するよう要請、いわゆるPBR改善要求を行った。これについて森永製菓 髙木氏は「コーポレートガバナンス・コードでは、企業がステークホルダーの期待に応え、持続的成長と中長期的な企業価値向上を実現するため、資本コストや資本収益性を十分に意識した経営資源の配分が重要とされています。一方、上場企業のROEやPBRの現状は、資本収益性や成長性といった観点で課題とされています。そのため、資本コストや株価に対する意識改革が必要とのご指摘を受けていると認識しています」と語る。

森永製菓グループにおけるPBRの中長期的推移は、2018年以降下落傾向が継続。2022年度末においては、約1.5倍の水準だ。髙木氏はこれを森永製菓グループの成長性が、資本市場から十分な評価を得られていない結果だとしている。

また森永製菓グループにおけるPBRとROEの相関は比較的強い。このため企業価値評価を高めるには、まずROEの改善が重要と考え、改善には「資本収益性の改善」と「資本コストの最適化」両者を推進する必要があるとした。

一方で資本収益性の改善には課題もあった。ROICマネジメントによる事業ポートフォリオの最適化、ROICツリー分析に基づく事業収益性の改善、投下資本の効率化などだ。資本コストの最適化については、財務安全性を確保した上での最適資本構成に向け、財務レバレッジを活用した資本コストの水準を調整している。

その上で、継続的かつ安定的な株主還元を目指した純資産配当率DOE水準の中長期的な引き上げと、機動的な自己株式の取得を進める。さらに進行期を最終年度とする中期経営計画の約2.5倍以上の株主還元を実行し、バランスシートの効率化を進めている。こうした取り組み、すなわち「資本コストを意識した経営」を通じ、持続的な企業価値の向上を目指していく。

 


BlackLineによる「見える化」でグローバルガバナンス強化を図る

 

「資本コストを意識した経営」の実践には、グループ全体を俯瞰した経営基盤の強化が重要だと髙木氏はいう。その上で経営層、とくにCFOには「いつでもどこでも、標準化された経営情報を、短時間で把握し分析できる体制」を提供する必要があると指摘する。こうした環境は、グローバル連結の視点や事業別、ブランド別、地域別、法人別といったさまざまな視点で、的確な経営判断を行えるからに他ならない。

一方で、高成長を続ける海外事業には、会計・決算・監査・FP&A業務を支える業績管理体制などといった、グローバル標準が求められる分野で多くの課題がある。

こうした状況を鑑みて、森永製菓グループは可視化・標準化・業務省力化・自動化・統制強化を強力に推進し、グローバルベースでの経営基盤強化を実現する全社プロジェクトを立ち上げた。

さらに課題を抜本的に解決するため、DXにも取り組んでいる。これについて髙木氏は「DXにより①業務品質や生産性を高め、②リソースを価値創造業務にシフトし、③ガバナンスを強化すると共に、④従業員にデジタルマインドを醸成し、組織カルチャーを変革することを目指している」と語る。

SaaSの活用も進んでいる。とくにBlackLineには、海外を含めた連結グループ全体の会計・決算・監査業務における「見える化」による統制強化・可視化・標準化・業務省力化・自動化などに期待しているといい、さらに人材リソース不足の課題解決やリソースシフトといった効果にも期待を寄せている。

 


財務経理の課題、人材確保と育成に「組織と業務の変革」で挑む

 

財務経理における組織と、業務の変革という大きな取り組みも行っている。

森永製菓グループにおいても人材確保と育成は重要な課題だ。とくにグローバルな経営展開を考えた場合、従来型のいわゆる「メンバーシップ型」の雇用スタイルだけでは限界があると認識。このような背景から取り組みをはじめたのが「財務経理における組織と業務の変革」である。

この取り組みは創業124年の老舗企業である森永製菓が、積み上げてきた伝統価値を継承しつつ、2030年に向けたビジョン「ウェルネスカンパニーへ生まれ変わる」ことを目指した経営の大改革だ。

森永製菓グループではこのビジョンの実現のため、経営戦略の中心に「ダイバーシティ&インクルージョン」を据えた。これは自律した強い「個」を活かせる、強さと柔軟さを備えた、多様性と活力のある組織作りを行うためだ。

 


人材から、求心力を得るため積極的に「他流試合」を実施

 

この大改革では、具体的にどのような取り組みを行っているのだろうか。

まず財務経理部門は、公認会計士資格を持った専門性を備えた人材を含め中途採用を行っている。また新卒の職種別採用や事業部門といった、現場経験を持つ従業員の同部署への異動などを通じ、多様なバックグランドを持つ従業員で構成されている。こうした人材を育成・活用し、経営戦略を行うには、まず会社のパーパスや経営ビジョン、ビジョンの実現に向けた変革構想を経営層やリーダーが牽引する形で共有し、一人ひとりに腹落ちしても

らうことが重要だ。

そして同部門ではデジタル技術の活用も進む。「いつでも、どこでも、標準化された経営情報を、少ない工数で把握し、分析できる体制の構築」を目指し、デジタル技術を活用したグローバル標準の業務体制確立に向けた構想を共有している。

さらに人材の求心力という点にも工夫がある。将来のIFRS適用検討も、国内外の関係会社や従業員も含めた、多様なバックグランドを持つ人材から、求心力を得るための旗印だ。

一方で、「個」としての人材の育成、活用については、将来構想に基づく人材のアロケーションが大切。これについて髙木氏は「①経営支援・事業支援の役割、②高度専門業務の役割、③実務の品質向上・生産性を高める役割、それぞれに明確な戦略の方向性を示し、スキル開発と業務経験の機会・環境を提供しています。最終的には従業員が自律的に自走し、「キャリア自律」、プロティアン・キャリアを達成することを目指しています」と語る。

なお森永製菓グループでは、社内での育成以外の人材育成方法も奨励している。髙木氏はこれを「他流試合」と呼び、積極的に社外との接点を求めている。すでに実施されている、BlackLineユーザーグループを通じた知の交流も、有益な「他流試合」になっている。

このように森永製菓グループは、いままさに大改革に挑戦している。大成功を収めるであろうこの大改革は、グローバルで財務経理の業務・組織変革に取り組んでいる企業にとって、必見の実例となるはずだ。

導入企業

 

森永製菓株式会社


創業:1899年8月15日

資本金:186億12百万円

売上高:【連結】1,943億73百万円 【単体】1,612億84百万円

従業員数:【連結】3,076名 【単体】1,472名

パートナー企業

 

ブラックライン株式会社


URL:https://www.blackline.jp/

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