top of page


食品業界を取り巻く環境変化へ迅速に対応するため
タイ味の素社が目指したデータドリブン経営を
S/4HANAを中心としたシステムで実現


変化に対応するために行われたS/4HANA化プロジェクト

 

タイ味の素社は、従来利用していたECC6.0から、S/4HANAへのリプレイスを決断した。

これまで利用していたECC6.0は、2007年に稼働をはじめたが、ビジネス変化の少ない食品業界ということもあり、これまで大幅な機能追加や改善を実施してこなかった経緯がある。一方昨今では、新型コロナウイルスや国際情勢への対応といった大きなビジネス環境の変化が発生し、このままでは変化に臨機応変に適応できない危機意識があった。

また同時に、ECC6.0や関連ハードウェアの保守期限切れが近づいていたこともあり、基幹システム更改の検討を開始。新たな基幹システムでは、例えば管理会計機能として予算、実績などをひとつのプラットフォームで実現したいといった要望も加えられていった。

同じ頃、味の素本社では、グループ全体での経営管理の見直しが行われ、味の素各社は本社の要望に対応可能なプラットフォームの実装が求められていた。こうしたさまざまな状況からシステムを検討した結果、新たな基幹システムとして選ばれたのがS/4HANAである。

S/4HANA化プロジェクトは、アビームコンサルティングが担当したが、これには理由がある。まずECC6.0を導入したのが、アビームコンサルティングであり、2年ほど前に導入されたSuccessFactorsも同社が導入したという実績があったためだ。タイ味の素社から見ると、自社のビジネスを一番よく知っている会社だったのである。

あわせて導入時のサービスの良さや、多くのS/4HANA導入実績を保持、かつアビームコンサルティングだからこそ可能な食品業界向けに特化した具体的な提案などが合わさった結果、採用となった。

 


ローリングフォーキャスト実現。データ分析基盤が完成

 

新システムは23年4月に稼働を迎え、プロジェクトは大きなトラブル無く同年6月に完了した。タイ味の素社はSAP Analytics CloudとSAP Datasphereによる、ローリングフォーキャスト及びデータ分析が可能な環境を手に入れたのである。なおアビームコンサルティングは、本プロジェクト後も新システムの運用保守を担っている。

従来、予算・見込み・実績の分析を行う場合、まず予算管理システムからデータを抽出し、見込みデータはExcelで収集、実績データはECC6.0から集めていた。何人もの人の手を使いつつ、2週間程度かかるような状況の上で、かつ人力であるがゆえにヒューマンエラーもあった。一方現在では、SAP Analytics Cloud内に設けられた月次・日次2つのKPIダッシュボードを用いてタイムリーに確認できるようになった。

このようなデータ分析基盤が整ったことにより、社内では現時点での状況や見込みを確認し、KPIに関連・付随するデータやファクトを探して分析を行うなど少しずつデータドリブン経営が実現し始めている。

 


 

タイ味の素社が目指す外部データ利用とケイパビリティ向上

 

現在KPIダッシュボードで可視化されているデータは、主に予算・見込み・実績等の財務指標が中心だ。今後はグループ全体で取り組んでいる、外部データを活用したマーケティングや顧客・消費者視点での可視化や分析も目指す。

既にPOSデータを組み合わせた分析などを、アビームコンサルティングが提案している。

また小椋氏は、分析の質を向上させるには、タイ味の素社全体のデジタル人財育成がカギだとも語る。優秀なシステムが完成したとしても、それを扱う「人」のケイパビリティが高くなければ、分析の質を継続的に改善させることは難しいからだ。このためタイ味の素社では、「人」のケイパビリティ向上に向けた施策も検討している。

 


組織全体のKPIを把握することで部門間のコミュニケーションが向上

 

今回のプロジェクトでは、副次的なメリットも生まれた。それは部門間のコミュニケーション向上だ。大きく、そして歴史のあるタイ味の素社は、セクショナリズムが強く、部門同士のやり取りが活発とはいえなかった。結果、各部門は独自のKPIを重視するあまりで個別最適になり組織全体のKPIが希薄化される傾向があった。

予算や見込み、実績データを分析しようと考えた場合、部門間でバリューチェーンとして連携しているため、部門間でまたがるデータを確認する必要がある。したがって、プロジェクトが進むにつれ部門間のコミュニケーションが増え、また今回のプロジェクトで実現したローリングフォーキャストを通じ、組織感の繋がりが強くなったのだ。組織間、担当間といっただけでなく、役員同士のコミュニケーションも増えたと、小椋氏は語る。なお現在では、ダッシュボードによって会社全体はもちろん、全社KPIを構成する各部門のKPIも確認可能だ。

その他S/4HANA化により、運用コスト50%削減といった目に見える効果があった。なお今回のプロジェクトでは、BI/DWHシステムの統廃合による、システムのシンプル化も実現しているため、これも運用コスト削減に寄与している。またデータ活用については、現段階ではデータ活用を開始した段階ということもあり、今後の効果に期待していると語る。

今年度は引き続きデータ分析を進め、分析の高度化を目指す。そして全体と自部門の目標達成に、どのようなアクションが必要なのかといった、データドリブンでの経営に繋がっていくことを目指していると小椋氏はいう。

今後はこうした取り組みを進める中で、分析が必要なデータや新たな要件の追加も検討されるはずだ。このような場合でもDatasphereとSAP Analytics Cloudの組み合わせにより、アジャイルで対応が可能な点も新システムの魅力のひとつである。

 

データ分析の土台を進化させ、データ活用の高度化を実現する

 

今はまだ、新たなシステムのすべての機能を使い切れていないと小椋氏はいう。このため、まずはSAP Analytics Cloudの予測機能や、S/4HANA、Datasphereの機能を有効に使いこなすための、従業員のケイパビリティ向上を進めている。

アビームコンサルティングについて小椋氏は「本プロジェクトを通じて、アビームコンサルティングとの強いリレーションシップができた。タイ味の素社のビジネスや全社の取り組み課題を詳細に理解してくれている」と語る。今後アビームコンサルティングが、タイ味の素社が目指す中長期的な実現目標も組み入れた提案を、引き続きおこなってくれるだろうと期待も寄せていた。

導入企業

 

味の素グループ(タイ味の素社)


業種:食品 事業内容:調味料・食品、冷凍食品、ヘルスケア等

資本金:798億6,300万円

パートナー企業

 

アビームコンサルティング株式会社


URL:https://www.abeam.com/jp/ja

bottom of page