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2019導入事例

カゴメ株式会社(導入:日本マイクロソフト株式会社)

1,000以上あったアドオンを100未満に削減
カゴメのSAP S/4HANA移行における
"現場の理解を得た業務標準化"の進め方とは

システムに業務を合わせる――業務標準化を目的にしてこうしたIT変革を推し進める企業が増えている。ただ、すべての業務を標準化すべきかというと、そうではない。商品開発やマーケティングといった企業価値を左右する領域は、リソースを集中させてでも業務にシステムを合わせる。そしてこのリソースを捻出するために、汎用的な業務領域の標準化を進めていく。こうした"選択と集中"が、先に挙げたIT変革では求められる。



🔸企業価値を追求するための"選択と集中"


カゴメグループではこれまで、利用者満足度に傾倒してすべてのITを運用してきたと、グループのバックオフィス業務を管轄するカゴメアクシス株式会社 業務改革推進部 BPRグループの村瀬智史氏は語る。しかし運用リソースには限りがあり、すべてのシステムに人材や予算を割り当て続けることは困難だ。そこで商品開発や品質管理、マーケティングといった企業価値を左右する領域は競合差別化のために前衛化を進めるべきと言及。ITには業務の独自性に合わせていくなかで、利用者満足度を追求すべき領域とそうでない領域を切り分ける"選択と集中"が求められる。

「当社グループでは管理業務の多くでSAP ERPを利用していますが、業務にシステムを合わせてきた結果、稼動するアドオンが1,000を超えていました。加えて、独自に構築して来た.NETシステムが多数乱立し、ERPとのシステム間連携の複雑化を引き起こしていました。10名以上の常駐開発者とAMOサービスという体制でこのシステム環境を運用してきましたが、年間約1万件もの利用者からの問い合わせ対応に追われ、本当に取り組むべき業務領域にリソースを割くことができなくなっていました。正確さや効率などを維持向上しながら管理業務を標準化し、利用者満足度を追求すべき領域にリソースを割り当てたいと考え、2018年度から取り組んだのがSAP ERPの刷新でした」(村瀬氏)



村瀬 智史 氏 カゴメアクシス株式会社 業務改革推進部 BPRグループ

 

🔸Azureを利用したフルクラウド環境でSAP S/4HANA移行を進行

カゴメグループでは、FI(財務会計)やCO(管理会計)、MM(購買管理)、HCM(人事管理)などのモジュールを管理業務で利用している。アドオンを廃止して標準化を進めるには、管理業務が効率化されることを示して利用者の理解を得る必要があった。 そこで、より高い効率化効果が得られると判断し、SAP S/4HANAへの移行を決断。インメモリーデータベースによる性能向上と、周辺システムとの高い連携性により業務の連続性を高められることが理由だ。 同プロジェクトのインフラ構築をリードしたカゴメアクシス株式会社 業務改革推進部 システム運用グループの磯谷亮太氏は、オンプレミスではなくAzureを利用したフルクラウドでSAP S/4HANA環境の構築を進めたと説明する。

「プロジェクトが自身の業務だけでなくグループ全体を加速させる取り組みであることを示せば、社員は前向きに取り組んでくれると考えました。リソースの最適化によってグループ全体を加速させる、その効果を最大化する上ではクラウド化が必須だと考えたのです。我々のシミュレーションでは情報関連経費の視点でも、オンプレミスとほぼ同額のコストで稼動できると見込めました」 カゴメグループではWindows ServerやSQL Serverなど、数多くのマイクロソフトのサービスを利用している。これらを含む包括ライセンスとしてAzureを契約することで大きなコストメリットが見通せたこと、また、複数サービスを横断したワンストップのサポートが得られることに加え、高い信頼性を持つAzureだからこそミッションクリティカルなシステムのクラウド化を断行できたと磯谷氏は語る。

「マイクロソフトのデータセンターが世界有数の堅牢性を持っている点を評価し、2015年以降、Azureを利用した社内ITのクラウド化を進めてきました。今回パートナーに迎えたJSOLからも、Azureで本番環境を稼動させることに何の懸念もないと太鼓判を押されました。当社内の実績、SAP案件に数多く携わるパートナーの見解の双方から、AzureはSAP S/4HANAを稼動するに足るクラウドだと判断しました」



磯谷 亮太 氏 カゴメアクシス株式会社 業務改革推進部 システム運用グループ

 

🔸利用者へ配慮した移行作業でスムーズな業務移行へ

カゴメアクシスとJSOLは、開発着手から半年後にシステムの一次実装を完了。同時期でアドオン開発の単体テストまでを済ませ、以後も開発・検証作業が進められている。 「JSOLのSAP ERP導入ソリューション『J-Model』を利用し、1,000以上あったアドオンのおよそ9割を標準化できました。独自仕様の開発領域を狭め、短期構築できたおかげで統合テストや社員用の手順書作成などに期間を割り当てられ、大きな問題なくSAP ERPの刷新を完了できる見通しです」(村瀬氏) ヒアリングの場では、各アドオンの標準化有無を判定する場も設定。効率化のエビデンスを示すことで、利用者の理解を得ながらアドオンを削減していくという。

「利用者と逐次コミュニケーションを取りながら進めることが重要だ。2020年1月の業務移行までには利用者教育・業務習熟期間を設けるほか、稼動前にパフォーマンスの検証など十分な受入れテストを行い、リリース後もスムーズに業務移行が進むことを目指しています」(村瀬氏) また、SAP S/4HANAは、ASCS(ABAP SAP Central Services)と呼ばれるシステムインスタンスとアプリケーションインスタンス、データベースインスタンスという3つのインスタンスで主に構成される。クラスタ構成によってAzureのメインサイト内で冗長化を行っているほか、Azure Site Recoveryを利用してDR対策も実施。主にJSOLがSAP S/4HANAの構成を管理、健全性を監視することで、安定稼動を堅持していくという。



🔸利用者と足並みを揃えて業務移行を推進

カゴメアクシスの見通しでは、J-Modelを利用したSAP S/4HANAへの移行によって管理業務のおよそ91%が標準化される予定だ。 「IT管理だけでなく、現在のシミュレーションでは管理部門の業務を年間4.6万時間分ほど効率化できると見込んでいます。人的リソースの最適化とその"選択と集中"によって、企業価値をいっそう引き上げていきたいですね。そのために正式リリース後も、管理部門とともにシミュレーション通りの数字が達成できているかを確認しながら業務移行を進めます」(村瀬氏)

「私が担うべきは、安定稼動の追求と情報関連経費のさらなる圧縮と考えています。今は移行スピードを重視してIaaSでのリフトを進めていますが、今後はPaaSの活用も進められるでしょう。Azureの機能も積極的に利用しながら、安定稼動とコスト最適化を追求します」(磯谷氏)

カゴメグループでは、2020年1月のSAP S/4HANA移行をもって業務システムの大部分がクラウド化される。クラウドとSAP S/4HANA、双方が持つ高い連携性によって、システムや業務の連続性はいっそう高まっていくことだろう。ひいてはそれが、社員全体の生産性を引き上げていく。カゴメという企業は、これから先も高い存在感を業界に示していくに違いない。




カゴメのSAP S/4HANAアーキテクチャ概要



会社概要 カゴメ株式会社 設立:1949年 資本金:199億8,500万円 従業員数:2,504名(平成30年12月期) 事業概要:調味食品、保存食品、飲料、その他の食品の製造・販売、種苗、青果物の仕入れ・生産・販売 https://www.kagome.co.jp/



パートナー企業

日本マイクロソフト株式会社





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