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2021年導入事例

NEC グループ(導入:日本電気株式会社)

環境変化に対応すべくNECが歩んだ
コーポレート・トランスフォーメーション
その取り組みと目指す未来とは

長年IT環境の再構築を進めてきたNEC。2018年より新たな全社改革を伴う取り組みを開始した。これはいわゆるDXではなく、コーポレート・トランスフォーメーションだという。NECはどのような改革を行い、そしてどこに向かうのか。気になる手法と戦略を井手氏に聞いた。



改革前の課題

・過去の環境変化への部分的対応が、全社目線では限界に

・将来の事業成長に向けた抜本的な改革が必要だった


改革のポイント

・全社目線でのコーポレート

・トランスフォーメーションを決断

・それを推進するTransformation Officeを設立し、検討を加速中



🔶なぜNECは全社を巻き込んだビジネス改革に挑んだのか


NECでは、過去10年強に渡り、SAP ERPの導入、リモートワーク環境整備など、社内IT環境の再構築を推進してきた。また2018年からは人・カルチャー変革にも着手し、NEC WAY・Code of Valuesの見直し、オフィス・働き方改革、人事制度改革なども進めている。


一方、こういった取り組みだけでは外部環境変化への対応としては不十分とし、ビジネスインフラの抜本的再構築にも着手。 制度・プロセス・組織・IT・人・データの全てを同じコンセプトで改革し、時代の変化を先取りできる文化への実現に向けて、改革を加速させている。




NEC 業務改革本部長

NEC マネジメントパートナー株式会社 非常勤取締役

グロービス経営大学院 専任教授

井手 伸一郎氏


 

🔶ビジネス環境変化に対するコーポレート・トランスフォーメーション


NECが取り組むのはいわゆる単純なDXではない、企業全体の改革、すなわちコーポレート・トランスフォーメーション(以下CX)だ。

これについて、「改革はどのレベルでやるかが大事です。たとえば目の前の業務の生産性改善などは着手しやすい。しかしこうした局所的な改善では本質的な課題は解けません。中長期的な視点で、改めてお客様に何の価値をどのように提供するか、その目線で全社の仕組みを再構築するCXがNECには必要でした」と井手氏は語る。


NECが属する業界は、過去20年間、グローバルレベルでのスケール化、モノ売りからソリューション売りへの変化、XaaSのようなクラウド化、国際会計制度の見直しなど、ビジネス環境の大きな変化が発生。NECはそれらに都度対応してきたものの、全社目線ではあちこちに歪みが蓄積し、事業を支える仕組みとして最適ではなかった。また、プロセス改革を進めようとすると、制度とITがこれに制約をかけるなど、身動きが取れない状態が発生していた。


そこで今回は、将来のビジネス成長を支えるコーポレートインフラのTo-Be像を改めて描き、制度・プロセス・組織・IT・人・データ全てを同時に改革することを選択。実行の困難さは非常に高いものの、To-Beへはむしろ近道になる。顧客提供価値の更なる拡大に向け、大きな改革に向き合うことを決断した。




 

🔶全社CXを促進する第3軸Transformation Office


2021年6月、NECは、事業軸(縦軸) とコーポレート軸(横軸) の双方に改革を促進する、第3軸の体制として「Transformation Office(以下TRO)」をCEO直下に設立。コーポレートの各CxOや事業軸の各役員と連携し、全社最適視点でのインフラ作りを加速させている。


改革は終わることがないと井手氏は念を押す。「事業環境は常に変化し、高度化領域は常に進化しています。継続的な改革が必要であり、その改革を受け止められるコーポレートインフラ作りと、業界をリードして変化を先取りする文化の醸成が必要です。TROが中心となって、その実現を目指します」。


 

🔶NEC流CXコンセプト“強さ”と“しなやかさ”


NECのCXのコンセプトは、強さ(Resilience) と、しなやかさ(Agility)を掲げている。

全社として共通化・標準化することで、安全性・効率化・高度化が促進できる領域は、徹底的にこれを促進する(強さ領域)。一方、経営の柔軟性・事業間シナジー・社員の多様性・社内外連携などは、これを負荷無く実現できる環境を用意する(しなやかさ領域)。


井手氏は語る。「コンセプト立案に向け、多くの外資・内資企業の先行事例を調査しましたが、外資企業を中心に、徹底的な標準化が進んでおり、これは非常に参考になりました。一方、標準化だけではNECビジネスや現場の強さを活かす日系企業にはフィットせず、“強さ”と“しなやかさ”のバランスが日系企業には最適であるという概念に到達しました」。


標準化されたインフラに、事業の固有性を重ねていくことで、事業は標準化されたインフラを活用しながら事業領域に集中ができる。また、このインフラの上で事業再編も柔軟に対応できる世界を目指している。


 

🔶クラウド時代に合わせたITアーキテクチャ


ITアーキテクチャには、昨今のクラウドサービスの拡大を鑑み、“Core”+“Side by Side”のコンセプトを導入した。「クラウド」は、“Core”領域として、ベンダーが対象ビジネス領域のベストプラクティスをサービス提供する基盤であり、定期的に機能がアップデートされるものである。「この領域は、世界の頭脳家が徹底的に議論して作った標準サービスですから、Fit to Standardとして、世界の最先端に自らの体を合わせる方が得策です」と、井手氏は語っている。


一方で、世界標準に体を合わせるだけでは、差別化できない。そのためNECの強み領域は、“Side by Side”型開発スタイルを用い、クラウド領域を邪魔しない形でアドオン開発を行うことで、標準化と優位性構築の双方を実現する。まさに、“強さ”と“しなやかさ”のコンセプトを、ITアーキテクチャでも実現する。


 

🔶事業領域も“強さ”と“しなやかさ”これを支えるCX


「NECの事業領域も、“強さ”と“しなやかさ”が求められる」と、井手氏は語る。NECにおける、生体認証やAI、XaaS・クラウドサービスなどの共通商品軸は、全社目線で標準化させ、スケールを効かせた投資による競争力強化が必要となる。一方で、SIerと呼ばれる顧客軸は、顧客の経営課題に向き合い、共通商品軸の商材を組み込みながら、顧客環境に合わせたITの提供が必要となる。これも、まさに“強さ”と“しなやかさ”のコンセプトが適用され、標準化による競争力と柔軟性による差別化の双方を支える、コーポレートとしてのビジネスインフラの整備を目指している。


 

🔶自社の取り組みを活かし、日本企業のCX/DXをサポート


NECでの社内CXは、最終的に顧客への提案につなげていくという。「単なるIT的な技術提案だけでなく、NECがCXの企画・実行において、外部事例を調査し日系企業流にアレンジしたコンセプトや、どこから改革を着手し、どういう論点を解き、どういう体制で進めてきたか、これら改革手法そのものが、お客様のDX推進にプラスになると思っています。NECの改革そのものを、社会・企業のDXの促進につなげていきたい」と井手氏は意気込みを語ってくれた。




<< 会社概要 >>

日本電気株式会社

創立:1899年7月17日

資本金:4,278億円 (2021年3月31日現在)

売上収益:2020年度実績 単独 1兆7,055億円 連結 2兆9,940億円

グループ主要事業:社会公共、社会基盤、エンタープライズ、ネットワークサービス、グローバル



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