
2021年導入事例
旭化成株式会社(導入:日本マイクロソフト株式会社)
DX戦略の中枢基盤に
HEC with Azureを採用した旭化成
その理由はシアトルで見た将来像にあり
旭化成がすすめるDX戦略の中枢基盤として、HECが採用され、そのインフラにはMicrosoft Azureが選ばれた。さまざまなクラウド環境が選択できる現在、Azureを選択した理由はどこにあるのだろうか。
導入前の課題
・オンプレミスでは試験環境の構築などが迅速に行えない
・保守やスケールアップといった調達に関する問題
導入後のメリット
・クラウドの利点を活かしスケールアップや構築が容易に行える
・Microsoft社のソリューションを活用した拡張性
🔶旭化成が進めているDX戦略DX Vision 2030
旭化成では「DX Vision 2030」と銘打った社内のDXを、2018年より進めている。その目的は「デジタルの力で境界を超えてつながり“すこやかなくらし”と“笑顔のあふれる地球の未来”を共に創る」というものであり、DXはその手段というわけだ。
プロジェクトは大きく4 段階に分かれている。2018年からのデジタル導入期を終え、現在はデジタル展開期を進んでいる。2022年にはデジタル創造期に移行、そして2024年には、4万人の社員がデジタル人材となり、皆がデータを活用できる状態となるデジタルノーマル期を迎える予定だ。旭化成は掲げたDXの「目的」に向かって、疾走しているのである。
🔶オンプレミスにおける課題をインフラのクラウド化で解決する
旭化成は、DXの一環として2018年に、SAP ECC 6.0をMicrosoft Azure(以下Azure)に移行、現在も稼働している。いわゆるSAP on Azureだ。
クラウド移行の理由はいくつかある。「社内では本番環境をコピーして試験環境を構築するといったニーズもありました。オンプレミスでは作業も大変ですし、コストも高くなります」と、IT統括部 課長の塩月 修平氏が語るように、大型の改修作業を行う場合や、サーバを構築する際の調達費用の問題を解決するには、クラウド化が最適だ。
さらにオンプレミスのハードウェア保守についても問題があったという。PJリーダーを務めたIT統括部の鈴木 明氏は「メモリが足りない、老朽化が…となれば、その都度調達して調整する必要があります。こうした作業の時に塩月が“ 次はクラウドにしたい”と。スケールアップも容易だから、と言っていました」とも語っている。
この2017年頃、すでにクラウド移行はトレンドとなっていて、ERPにおいてもクラ
ウド化の事例が増えてきたタイミングでもあった。しかし旭化成の行ったクラウド化は、トレンドだからという理由ではない。目的があり、その手段としてのクラウド移行だったのだ。そしてこのERPの移行を皮切りに、再構築を進める他のシステムについても、完全にクラウドで進められているという。

🔶DX 戦略の中枢基盤を構築するためSAP on AzureからHEC with Azureへ
当然SAP on AzureだけでDXが実現するわけではない。旭化成が目指すのはデータの活用であり、そのためには「DX戦略の中枢基盤」を構築する必要があるからだ。そこで現在、HEC with Azureの構築作業を進めているという。
しかしデータ活用を実現するために、これまで20年以上に渡って構築・運用されてきたシステムを改修・メンテナンスすることは、途方も無い作業と言える。
鈴木氏は「システムのメンテナンスや、これまでの膨大なデータを整理するのであれば、すべてをきれいに作りたいと考えました。そのために、マイグレーションではなく、新規構築にしました。グリーンフィールドですね」と語る。旭化成は、DX戦略の中枢基盤構築
のためにレガシーを捨てたのだ。さらにHEC with Azureの導入にあたり、S/4HANAに合わせた業務の標準化も推進。現在、2023年4月の本稼働を目指して構築中だ。
🔶Azureを採用した理由はシアトルで見たMicrosoftの事例と将来性
ではHECのインフラとして引き続きAzureを採用した理由は、どこにあるのだろうか。もちろんSAP on Azureでの導入実績があることも関係しているが、それ以外にも多くの、そして大きな理由があった。
まず理由の一つに“バリデーション”があると塩月氏は言う。「これまでのERPでは、バリデーション対応(CSV)が別な仕組みとなっていました。HECでもバリデーション対応が必要です。AzureはCSV対応していますから、これも採用理由の一つです」。
また、2019年にシアトルで行われたJSUG国際派遣プログラムへの参加も採用理由となったという。「シアトルでMicrosoft担当者と話をしました。この当時、すでにHECのプラットフォームは複数社の製品から選べましたが、Azureの採用実績が多かったのです。もちろんSAPだけでなく、他のシステムへの採用も多かったです」と、IT統括部 課長の上杉 俊太氏は当時を振り返っている。
さらに、シアトルで目の当たりにした、自身もSAPユーザであるMicrosoftの取り組みに大きな影響を受けたという。ちょうどその頃、MicrosoftもS/4HANA化をしていたが、それだけではない。MicrosoftではSAP on Azureはもちろん、Microsoftのアプリケーション群やデータレイクなどもAzure上で動作させていたのである。「Microsoft自身がSAP最大のユーザです。Microsoftは、Azure上でS/4HANAと機械学習の連携などを実現していたのです。Azureと私たちの目指すDXはとても親和性が高いと実感しました」と塩月氏は言う。
その他にも、Microsoft Power BIとSAPのHANAを繋いだレポーティング、SAPデータのデータレイクへの準リアルタイム連携など、SAPとAzureの連携だからこそ実現できる、拡張性の全体像を体感したという。そしてそれは旭化成が「できたらいいね」と考えていたことそのものだったのだ。シアトルでのMicrosoftとの出会いは、旭化成にダイナミックかつ将来性を感じさせるものだったのである。
🔶AzureそしてMicrosoftとともに旭化成のDX戦略がスタートする
インフラにAzureを選択した旭化成。まだ本稼働前のため、その効果を直接享受してはないが、IT統括部の宮川 大和氏はその展望についてこう語る。「現状、Microsoft 365を利用しており、専用線も引いています。今後これをHEC with Azureにも分岐することで、より低レイテンシーになるでしょう。通信速度を上げ、HEC with Azureとともに行う、データ活用の利便性向上に期待しています」。
さらに現在、旭化成はデータマネジメント基盤をAzure上に構築中である。将来的にHEC with Azureと連携しDX Vision 2030を実現する計画だ。デジタルノーマル期を目指す旭化成とMicrosoftのタッグ。両社の今後の動向に注目したい。
<< 会社概要 >>
旭化成株式会社
創業:1922年5月25日
資本金:103,389百万円
従業員数(連結):44,497人
事業内容:ケミカル、生活製品、繊維、エレクトロニクス、医薬品、医療機器、住宅、建材など
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