
2019年 導入事例
小林化工株式会社(導入:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社)
SAP ERPのインフラ基盤にCUVICmc2を採用
医薬品の品質維持と安定供給に向けて業務効率性を強化
福井県あわら市を本拠地に、医療用医薬品の製造・販売を手がける小林化工株式会社。同社は後発医薬品(ジェネリック)ビジネスの急成長を見据えて、グローバル製薬業界で広く活用されているSAP ERPを導入。インフラ基盤にはSAPに最適化されたクラウド基盤「CUVICmc2」を採用し、運用負荷の軽減とインフラコストの最適化を図った。高パフォーマンスなシステム基盤の整備により、さらなる企業価値創出を推進している。
🔸国内外の医療機関や調剤薬局に高付加価値型のジェネリック医薬品を提供
1946年から半世紀以上にわたって医療用医薬品/一般用医薬品の開発/製造/販売を行う小林化工。現在はジェネリック医薬品に特化した製薬会社として、ライフサイクルマネジメントの観点から高度な製剤技術を駆使して高付加価値型製品の開発を進めている。代表取締役社長で最高経営責任者の小林広幸氏は次のように語る。
「当社が追求しているのは、患者様が飲みやすく、医療関係者の皆様が取り扱いやすい製品作りです。当社独自の工夫を施した、高付加価値型ジェネリック医薬品の研究開発と供給を進めています」
高レベルの品質保証と需要拡大に応えるため、安定供給に関しては医薬品の製造・品質管理基準であるGMPの日・米・欧対応を目指した最新鋭の工場を建設し、ハード/ソフトの両面から充実を図っている。2016年には年間約10億錠の生産能力を持ち、ロボット技術を駆使してローコストオペレーションを実現した清間第二工場を竣工した。さらにオンコロジーセンター(抗がん剤製造棟)、総合物流センター、製剤技術総合研究所などを有し、優れた医薬品を全国に供給している。
海外でも早くから台湾でビジネスを開始以降、香港、韓国、ベトナムへの輸出を強化してきた。今後もASEAN地域やUAE等でグローバルビジネスを推進していくという。

小林 広幸 氏
小林化工株式会社
代表取締役社長
最高経営責任者
小林化工が基幹システムの見直しに着手したのは2017年。日本政府が「2020年9月までにジェネリック医薬品の使用割合を80%とする」方針を打ち出し、生産量・販売量の増大が確実視される中、大規模生産に対応できる体制が必要だった。しかし、既存システムは販売購買管理を中心に会計、生産管理、在庫管理、品質管理など個別で運用しており、システム間の連携が課題となっていた。また、より正確な原価管理も重要だった。そこで全社統合システムを構築し、経営判断に必要な情報をスピーディに入手できる基盤を整えることにした。
「データベースを統合し、各種の実績データをタイムリーに見られるようにすることが最大の目的です。また、業務の効率化を推進し、人的リソースを高付加価値業務にシフトしたいと考えました」(小林氏)
同社は、グローバルの製薬業界での実績が豊富なSAP ERPを採用。海外の製薬会社や原材料メーカーの多くと同じシステムであれば、円滑な取引にも役立つと考えたからだ。また、執行役員でコーポレート本部長の宮川修治氏は「既存のMES(製造実行系システム)やWMS(倉庫管理システム)との連携、導入パートナーの株式会社JSOLのサポート体制が充実していることなども含め、総合的に判断して決めました」と振り返る。
SAP ERPのインフラ基盤は、JSOLの提案をもとにCTCの「CUVICmc2」を選定。製薬業務に必要なCSV(コンピュータ化システムバリデーション)対応をインフラレベルで実装していたことと、伊藤忠グループのCTCが提供するサービスの信頼性を評価した。コーポレート本部 情報システム室 課長代理の長谷部了氏は次のように語る。
「日常の運用、リプレース時のサーバー構築などの負荷軽減を考えてクラウドを選びました。当社にとっては初めてのクラウド導入でしたが、JSOLからCUVICmc2の稼働実績の説明やCSV対応の提案をいただきながら理解を深め、懸念点を解消していきました。CTCが提供するクラウドサービスであれば、海外の同サービスと比べて融通が利くと考えたことも理由の1つです」

🔸全社統合基盤による業務の高度化を目指してSAP ERPを導入
宮川 修治 氏
小林化工株式会社
執行役員
コーポレート本部長

🔸経営トップが積極的に関与することで一体感を醸成
2017年7月に始まった導入プロジェクトは要件定義、設計・開発、テスト・移行を経て、2018年10月に本稼働を開始した。会計、販売、購買、生産、品質のモジュールすべてをビッグバンで稼働。SAP ERPとは別途構築したLIMS(品質管理システム)、導入済みのMESシステム、物流システム(WMS)、データ交換システム(JD-NET)、Web受注システムとも自動連携させた。
キックオフ前の全体構想フェーズでは約4カ月かけて現状の業務課題を抽出し、改善点を整理した。また製薬業界特有のビジネスモデルを標準で実装しノウハウ化したJ-Model(SAPテンプレート)を活用して、業務の標準化と効率化を目指し、周辺システムとの連携も行うことでさらなる業務効率化を行った。SAPのベストプラクティスを維持し、独自の業務フローもSAP ERPに合わせ、アドオンが必要な業務については協議を重ねながら最低限に絞ったという。
「経営陣全員が当初から会議に参加して、全社を挙げて推進していくという姿勢を示しました」と小林氏が語るように、経営トップ自らトップダウンで進めたことも、一体感の醸成と社員の意識向上につながった。
プロジェクトメンバーには各業務部門のキーマン、さらに若手社員を積極的に登用して、新しいシステムを担う意識につなげたという。
「プロジェクトは、従来の業務を見直すきっかけにもなりました。標準化を進めながら業務のマニュアルを作成したことで、システム稼働後もスムーズに移行できました」(長谷部氏)

会社概要
小林化工株式会社
本社:福井県あわら市矢地5-15
創立:1946年12月1日
資本金:9,800万円
従業員数:720名
事業概要:医療用医薬品の研究開発、製造、販売
https://www.kobayashikako.co.jp/
🔸パートナー企業

