導入事例 「味の素食品株式会社」

味の素食品株式会社
S/4HANAで再構築、
基幹システムシンプル化を実現
国内食品生産体制再編の一環として、国内調味料・加工食品の製造・包装を担う新会社「味の素食品株式会社」を発足。同時にS/4HANA で基幹システムを構築した味の素食品社は、開発機能数を半減、基幹システムのシンプル化に成功した。

 導入前の課題
  • 各社固有業務やシステム機能を削減・シンプル化することで、グループ共通基幹システムを実現する必要がある。S/4HANA標準機能をできるだけそのまま使用することで、SAP内外に作られた相当数の外付け機能・アドオン機能を必要なものに絞り込むことが喫緊の課題であった
 導入後のメリット
  • SAP標準機能の利活用が進み、外付け機能・アドオン機能の削減に成功。
  • 外付け機能・アドオン機能削減の検討・判断基準・プロセスを確立。
  • 経理業務を中心にシェアードサービス化を見据えた業務標準化を実現

三社統合とS/4HANA導入

中村 恵子氏

中村 恵子氏
味の素株式会社
DX 推進部
基幹システム推進グループ
シニアマネージャー

2019年4月にクノール食品株式会社(以下、クノール食品社)を承継会社として国内食品生産体制の集約・再編が行われることとなり、味の素食品株式会社(以下、味の素食品社)が2019年4月に設立されることとなった。味の素食品社設立に合わせて2019年4月からS/4HANA を利用開始することが決まったが、ECC6.0を利用していたクノール食品株式会社と味の素株式会社は異なるインスタンスで稼働しており各社固有要件が存在していたこと、味の素パッケージング社はSAP 以外のパッケージを基幹システムとして利用していたことから、異なる3 社の基幹システムを統合するプロジェクトとなった。また、味の素食品社の正式発足と基幹システム利用開始が同タイミングとなったことで、構築の難易度が増すこととなった。
導入ベンダー選定に際しては、現行システムの維持保守を行い、顧客要件と現行システム機能に知見を持つNRI システムテクノ株式会社(以下、NST 社)をメインパートナーとするとともに、株式会社野村総合研究所(以下、NRI)がS/4HANA 導入を担当した。NRI が選ばれた理由は、2016 年に日本で最初にS/4HANA を導入・リリースした知見を有しており、NST 社との連携によって基幹システムを円滑に導入できると判断したことがその理由である。SAP 勉強会を通じて、S/4HANA が業務課題を解決できる基幹システムであるか否かの検証を味の素社主導でNST 社・NRI両社で進めた。

常に立ち戻る「プロジェクト憲章」の重要性

湯浅 貴征氏

湯浅 貴征氏
野村総合研究所
産業IT イノベーション事業本部
産業デジタル開発部

味の素食品社の導入に際しては、まず味の素グループの現状業務とシステムの問題点を書き出した。その上で、グループ共通基幹システムとしての基本方針と改革施策の方向性を掲げた。システム導入はあくまで改革施策を進めるための手段であり、「手段の目的化」が起きないよう、味の素社主体で慎重にシステム整備基本方針が纏められた。グループ会社間で異なる基幹システムを利用することによる維持管理費用の高コスト化の排除、特に経理業務については将来のシェアードサービス化を視野にS/4HANAをベースとする基幹システム構築を通じて、グループ共通システムを構築する方針であることが記載された。他にも、単品別原価差額配賦の実現による高度なコスト分析要件実現等の業務課題の解決や、勘定科目や取引先コード体系の統一等グループ共通基幹システム構築を通じて解決可能なシステム課題の解決が明文化された。
味の素社の中村氏(味の素社DX 推進部基幹システム推進グループシニアマネージャー)は語る。「基幹システムの構築には多くの関係者が関わります。関係者の立場や利害の相違から課題や問題は必ず発生します。その際、必ず皆が立ち戻るべき考え方を纏めたもの、それがこのシステム整備の基本方針であり、「プロジェクト憲章」と呼んでいるものです。当事者がこの基本方針に立ち戻って、これまでの検討や議論の内容を振り返るプロセスが大切。目指す姿が基本方針から逸脱してはいけないと考えます。その中でも特に拘ったのは『標準化』。S/4HANA の設計思想を理解し、とにかくシンプルに標準機能をそのまま使うことに拘りたいと考えていました」。
「NRI は「プロジェクト憲章」の重要性を弊社に啓発し続けてくれた。「プロジェクト憲章」の重要性を改めて認識したのは構築プロジェクトが進んで関係者の利害が対立したとき。判断の拠り所があったので、判断に迷うことは少なかった」。

三社の業務・機能統合の克服

高崎 晋平氏

高崎 晋平氏
野村総合研究所
産業IT イノベーション事業本部
産業デジタル開発部

また、中村氏は2004 年に味の素社へのECC6.0 導入を皮切りに、基幹システムの構築と維持管理に携わってきた。その中で感じてきたのは、業務要望を受けて増え続ける外付け機能やアドオン機能。「次の基幹システム導入では本当に基幹システムとして必要な業務とシステム機能を改めてゼロベースで揃えたいと考えていた。S/4HANA の標準機能を出来るだけ活用することで『標準化』が進められる。味の素食品社およびグループ基幹システム構築を通じて『標準化』を進めたいと考えていました」。
要件定義はクノール食品社・味の素社・味の素パッケージング社三社の担当者が集まって行われた。会計領域はグループ業務の標準化を、ロジスティックス領域は承継会社であるクノール食品社のやり方をベースに各社の業務を取り入れていく形で行われた。これらの推進とシステム機能の実現を取り纏めたのがNRI。中村氏は述べる。「NRI は第三者の立場で各社の要件を整理し、必要なもの・必要でないものの整理を進めて頂いた。味の素だけでは客観的な立場で評価・判断することは難しかったと思う」「最初は三社の担当者の認識を合わせていくことに苦労した。プロジェクトが進むにつれ、皆1つの会社に集まるのだから歩み寄れるところは歩み寄るという雰囲気が醸成されてきた。その後は効率的に進められたと思う」。

再構築(リビルド)と外付け機能 判定フロー導入でシンプルに

味の素食品社の導入ではバージョンアップではなく再構築(リビルド)の手法がとられた。バージョンアップではこれまでの機能が全て引き継がれることになる。味の素社まで含めると各社が持つ外付け機能数は相当数存在し、これらの機能をバージョンアップで単純移行してしまっては、「プロジェクト憲章」に謳った『標準化』を実現することは非常に困難となる。S/4HANA 導入に際しては、可能な限り業務を標準化し、S/4HANA の標準機能を使う形に変えていくことが重要になる。そのための基本方針は、「外付け機能・アドオン機能の廃止」だ。業務の内容や目的を明確化した上で、標準機能で代替できる機能は全て排除、その上で監査や法令対応、業務遂行上必須なもの、その他外部要因で作らなくてはいけない機能だけを残す。そのために、「外付け機能判定フロー」を作成し、各社の機能を「必須」と「便利」に分類した。判断基準が明確化になったことで、業務側は機能開発要求を提出する前に自身でその必要性を検討することができようになり、事務局側はフローに従って合理的に判断できるようになった。

味の素食品社への導入の成果

味の素食品社として利用予定であった476機能は210機能へ55%削減することに成功した。また、S/4HANA標準機能の性能向上により、ECC6.0では1時間以上を要していたバッチ処理が10分程度で終了するようになり、処理時間においても大きな改善が確認された。懸念された単品別原価差額配賦も性能問題の発生もなく安定して稼働している。
「我々が提案したプロセスをそのまま導入されたら、導入ベンダーの都合を押し付けられたように感じる方もいらっしゃるかもしれない。「外付け機能判定フロー」を味の素食品社主導で考えて運用頂けたことが重要でした」とNRIの湯浅氏・高崎氏。「現場が強いとシステムは現場の要望・希望に追随せざるを得ない状況が起こります。今回は法人設立と基幹システム構築が同じタイミング、今までと同じ業務を仕組みで実現できれば良いという判断基準を持つことは出来なかった。味の素食品社や導入に関わった関係者全員が変わらなくてはいけないという強い意識で業務見直しに取り組んで頂いたことが一番の成功要因。システム側も2019年4月利用開始必達に向けて一丸となって取り組むことができた」と語る。

グループ会社への展開がこれからの課題

2019年4月に本システムは稼働、現在は維持保守段階に移行している。あわせて、現在、味の素社のS/4HANAへの更新作業が進められている。S/4HANAへの外付け・アドオン機能を抑制しつつ展開していくことで、業務とシステム機能の標準化、グループ基幹システムの実現を目指すという「プロジェクト憲章」の方向性は変わらない。

会社概要

味の素株式会社

創業:1909年5月20日
設立:1925年12月17日
資本金:79,863百万円
従業員数:単体3,401名
連結32,509名
(2020年3月31日現在)

パートナー企業

株式会社野村総合研究所

株式会社野村総合研究所
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