導入事例「日本航空株式会社」

日本航空株式会社
徹底したプロジェクトマネジメント体制で
大規模な旅客系基幹システムをクラウドサービスに移行
2017年11月、日本航空株式会社(JAL)は、50年にわたって運用してきた予約・発券システムを、航空業界標準のパッケージソフトAmadeus Altea(アマデウス アルテア)のクラウド環境に移行した。新たなステージに向かうため、完成までに投資総額800億円を要したシステム刷新を成功に導いた背景には、あるべき姿から逆算で計画の立案/推進を後押ししたシグマクシスの徹底的なプロジェクトマネジメントが大きく貢献している。

半世紀を経た旅客系基幹システムの大規模刷新

青木 紀将 氏

青木 紀将 氏
日本航空株式会社
路線統括本部 副本部長

今回JALが半世紀ぶりに刷新したのは、PSS(旅客サービスシステム)と呼ばれ、旅客航空便すべての予約・発券・チェックイン業務を担う、航空会社の心臓部ともいうべき基幹業務システムだ。だが1967年にメインフレームで構築して以来、長年にわたる追加/変更で構造が複雑化し、小さな変更にも多くの時間と費用を要するようになっていた。

JALの経営陣はこのシステムの刷新こそ競争力強化の要ととらえ、1990年代から全社プロジェクトとして更新に取り組んできたが、経営上の重要案件が発生するたびに先送りを余儀なくされた。満を持して「SAKURAプロジェクト」がスタートしたのは2010年5月。JALが会社更生法の適用を申請した直後だった。

「基幹システムの刷新は、JALの経営再生における重要なインフラ施策となっていました。世界の航空会社130社以上が採用しているパッケージソフトAmadeus Altea(以下、アルテア)を活用した業務標準化とクラウド化によって、運用保守の大幅なコスト軽減が見込めると判断しました」と、プロジェクトリーダーを務めた路線統括本部 副本部長 青木紀将氏は振り返る。

2011年からは10数名のスタッフによるプロジェクトチームも動き出した。それでもなお、進捗は難航をきわめたという。

「業務改革を伴うプロジェクトでしたので、例えば世界標準機能を前提としたAmadeus社のシステムと日本国内の競争環境に即した複雑な国内料金の考え方の違いのように、社内の理解を必ずしも得られる場面ばかりではありませんでした」

ゴールに向け300名体制でプロジェクトを再始動

SAKURAプロジェクトが一大転機を迎えたのは2014年4月。Web販売部長を務めていた西畑智博氏(現、執行役員)が責任者に抜擢され、同時に経営企画部時代のERP導入プロジェクトを牽引した実績を持つ青木氏が旅客システム推進部長に着任し、PSSの現場責任者となった。両氏は過去の経緯や状況を分析し、2014年7月にITとビジネスの統合を実施。

社内および関係会社から各現場業務に精通した300人が選抜され、プロジェクトチームの再統合/強化が行われた。その際強調されたのが、新システムの稼動日程をまず決め、そこから逆算する厳格なスケジュール運営の必要性だ。

「全社挙げての巨大プロジェクトとあって、進捗状況をほぼリアルタイムで可視化し、その情報をもとにそれぞれの担当者が自律的に動くことが強く求められました」と青木氏は語る。

船出にあたって青木氏がもっとも重視したのが、プロジェクトマネジメントだった。当初プロジェクトの仕切り役は大手コンサルティング会社が担っていたが、技術面で豊富なリソースを持つ日本アイ・ビー・エムにマネジメントを交替。さらに、外資系パッケージソフトウェア導入のプロジェクト管理に精通したシグマクシスが参加し、テスト担当に日本タタ・コンサルタンシー・サービシズも加わった。

「シグマクシスは別途IT企画部の案件で、給与システムなどを担当していました。その実績を評価し、このプロジェクトに加わってもらおうということになりました。3社合同という形をとったのは、各社の得意分野の『いいとこ取り』をしたいという狙いでした」(青木氏)

あるべき姿から逆算して計画を立案/推進するシグマクシスの手法と柔軟な考え方がJALのニーズに合致し、プロジェクトは大きく前進することになる。

毎日の朝会を軸に精度とスピード感をキープ

3社合同という異色の体制でスタートしたものの、毎月1回の評価を経て間もなく2014年の夏には、シグマクシスが全体を統括する体制に落ち着いた。その理由に青木氏は、シグマクシスのプロジェクト管理手法を挙げる。それまでは従来通りのウォーターフォール型で開発を進めてきたが、そのスピード感ではとても完成できないと感じていた。

「新システムは70本を超える外部システムとの連携が必須で、開発途中で変更が発生することも前提に作業を進める必要がある。シグマクシスのアジャイル型開発に即した管理手法を見て、これならできると直感したのです」

またシグマクシスはマネジメント側の考えや議論の本質を、現場に対して解りやすく具現化するノウハウを数多く持っている。その好例が、プロジェクトの大きな原動力となった毎日の朝会だ。これはアジャイル開発におけるデイリースクラムをヒントに青木氏が考案したもので、プロジェクト期間中の毎朝1時間、JALと協力会社のリーダー全員が集まって昨日の報告と問題提起を行う。ときに1時間枠では足りず、2~3時間にもおよぶこともあった。有限な時間と早期のプロジェクト推進を意識し、朝早い方に時間を早める「早朝会」や「早々朝会」も実施し、ゴールを意識し決めるべきことを決めてきた。

さらにOODA(Observe/Orient/Decide/Act)ループに基づき、マイルストーン管理の手法を用いて、3カ月ごとにメンバー300名全員で進捗チェックを実施。可視化と情報共有を徹底することでメンバーの目線を引き上げ、プロジェクト全体の精度とスピードを最後まで高いレベルで維持した。

「シグマクシスはプロジェクトを進める上で『あるべき姿』を提示して、現状と対比させながら、その実現には何をするべきかというロジカルな思考や、実現に向けたロードマップとマイルストーンを示すことで、作業全体の進捗を力強く支えてくれました」

顧客ニーズへの柔軟な対応を目指して新たな業務基盤を活用

チーム一丸となっての取り組みのもとプロジェクトは着実に進み、予定通り2017年11月のサービスインを迎えた。移行データ量は1,358万件という巨大なシステムにもかかわらず、移行時のシステム停止時間はわずか6時間。しかも予定よりも15分早く切り替えを完了することができたという。

運用開始から間もなく1年、カットオーバー時に見送った機能の追加や不具合対応もほぼ収束し、これからは活用面でのさらなる充実を目指したいと青木氏は抱負を語る。

「移行のメリットとしては、年間数十億円規模のコスト削減を見込んでいます。また国際的な制度変更にも、クラウドなら迅速な対応が可能です。何よりお客さまのニーズの変化に柔軟に対応できる基盤が生まれたことで、現場から新しい活用プランが続々と挙がってきています。これらを実現していくための戦略立案およびプロジェクトのパートナーとして、シグマクシスには大いに期待しています」

さらに今回のプロジェクトでは、自社のビジネスのあり方に対するマインドの変革もあった。

「これまでは旧基幹システムをはじめ、自社に最適化されたシステムをゼロベースで開発する『自前主義』をとってきました。しかし今後は発想を転換し、世界中の事例やソリューションに目を配り、ベストプラクティスを見つけて即座に業務に応用する。そうしたスピード感をもって私たち自身が変わっていく必要があると実感しています」と、青木氏はお客さま自身がまだ気づいていないニーズまでをすばやく拾い上げ、新しい価値を提案していきたいと力強く語る。
新たな翼を得て、大きく羽ばたくJALの行く手に注目していきたい。

会社概要

日本航空株式会社

設立:1951年8月1日
資本金および資本準備金:3,558億4500万円 ※100万円未満切り捨て
売上高:連結 1兆3,832億円(2017年度)
従業員数:12,127人(2018年3月現在)
事業内容:定期航空運送事業および不定期航空運送事業/航空機使用事業/その他附帯するまたは関連する一切の事業
https://www.jal.com/ja/

パートナー企業

株式会社シグマクシス
株式会社シグマクシス

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