導入事例「九州電力株式会社」

九州電力株式会社
Azureの活用により財務システムを早期刷新
電力システム改革の中で変化に強いIT基盤の構築へ
2011年に発生した東日本大震災とこれに伴う原子力事故を契機に、新たな法体制への移行や競争の激化など、エネルギー産業は今、大きな変革期を迎えている。九州電力は、経営基盤となる財務システムをSAP S/4HANAに刷新するプロジェクトを推進。パブリッククラウドであるMicrosoft Azureを活用することで、市場のめまぐるしい変化やリアルタイム経営に対応できるIT基盤を整備しつつある。

パブリッククラウドを活用したSAP S/4HANA移行を計画

吉田 龍義 氏

吉田 龍義 氏
九州電力株式会社
テクニカルソリューション
統括本部
情報通信本部
経理プロジェクトグループ

小島 毅士 氏

小島 毅士 氏
九州電力株式会社
テクニカルソリューション
統括本部
情報通信本部
経理プロジェクトグループ

九州電力は2015〜2021年度の「グループ中期経営方針」において「『日本一のエネルギーサービス』を提供する企業グループ」となることを掲げている。この方針達成に向けて、九州電力株式会社 テクニカルソリューション統括本部 情報通信本部経理プロジェクトグループ 吉田龍義氏は次のように語る。

「当社はガス小売事業や再生可能エネルギー事業など、新たな取り組みを積極的に展開しています。変化への対応力を強化するにはITも『標準的なシステムに業務を合わせる』という思考への変革が必要です。この象徴となるプロジェクトが財務基盤のSAP S/4HANA移行です」

約20年間運用を続けてきたスクラッチのシステムでは、2020年の送配電部門の法的分離など今後の産業変化への対応が困難だった。パッケージに合わせて業務フローを標準化することは、変化に追従可能な「スピード経営」の実現に繋がるという判断だ。また、インフラ整備の方針について同社のテクニカルソリューション統括本部 情報通信本部 経理プロジェクトグループ 小島毅士氏は次のように説明する。

「開発検証基盤とDR(災害対策)基盤にMicrosoft Azureを採用しました。当面はオンプレミスで本番稼動させる予定ですが、SAP S/4HANAは少なくとも10年間利用し続けるシステムです。時代に合わせてインフラも可変していけるよう、パブリッククラウドの活用を決定しました」

同社グループは自社データセンターに構築したプライベートクラウドで全ITを整備してきたが、プライベート環境では物理リソースに制約がある。パブリッククラウドであれば、物理的な制約や上限を解消し、アジリティをさらに高められる。

財務データを預けるセキュアなサービスとしてAzureを選択

白野 隆 氏

白野 隆 氏
九電ビジネスソリューションズ
株式会社

プロジェクト開始は2016年度で、2018年度中の完了を目指している。
「SAP S/4HANAは、各事業システムとも連動するコアシステムです。また、各事業の財務情報を集約しているため、管理されるデータは極めて重要な企業資産でもあります。Azureを選択した最大の理由は、システムを安定して稼動しつづけることができ、セキュアにデータを守ることができるという信頼性の高さにありました」(吉田氏)

東日本と西日本にデータセンターを構えるAzureは、物理的な冗長構成が可能だ。これにより可用性が高いだけでなく、有事が発生した場合に日本国内の管轄裁判所を通じて、クラウド上のデータを手元に戻すことができる。また、マイクロソフトは日本で初めてCSゴールドマークを取得したベンダーであり、セキュリティ面で優れた実績を有する。加えて、SAPシステムと高い親和性を持つ。

「SAP ERPは移送管理システム(TMS)という、異なるドメイン間のシステム変更を自動実行、監視するしくみを備えているため、本番環境と開発検証環境を素早く安全に入れ替えることが可能です。将来、オンプレミスで稼動させているSAP S/4HANA本番環境をクラウドに移行することも考え、オンプレミスとクラウド間のシステム移送を意識してパブリッククラウドを選定する必要がありました。Azureが当社の求める移送方式に対応していたことも、大きなポイントでした」(小島氏)

九州電力ではRed Hat Enterprise Linux(RHEL)を標準環境としてきたため、OSSで構成される開発検証環境の迅速な立ち上げにAzureは適切なのかという懸念があったが、開発の前段階で懸念は払拭されたと九電ビジネスソリューションズ株式会社の白野隆氏は語る。

「OSSとクラウドベンダー間の役割が整っていないと、問い合わせの際にたらい回しにされ、開発が滞るおそれがあります。しかし検討を進める中で、マイクロソフトとレッドハットが強いパートナーシップを築いていることが分かりました。マイクロソフトがオープン化を進めているという印象は受けていましたが、想像以上に数多くのOSS、さまざまなベンダーと強固なパートナーシップをもっていました」

2カ月という短期間で開発検証環境を用意

高下 大輝 氏

高下 大輝 氏
九電ビジネスソリューションズ
株式会社

志道 賢治 氏

志道 賢治 氏
九電ビジネスソリューションズ
株式会社

パートナーシップに基づく技術支援、Azureの機能性を活かすことで、九州電力はわずか2カ月でSAP S/4HANAの開発検証環境を用意した。九電ビジネスソリューションズ株式会社の高下大輝氏は次のように話す。

「クラウドで仮想マシンを迅速に立ち上げられる上、AzureではSAP環境を構築するために必要なソフトウェアやサービスを即座に手配することが可能です。RHELやSAPHANAベースのアプリケーションに対応したサービス、仮想マシンなどをAzure Marketplaceから入手して即座にデプロイすることができるため、開発検証環境の立ち上げ期間を大幅に短縮できました」

九電ビジネスソリューションズ株式会社の志道賢治氏は、マイクロソフトの技術的な支援も評価する。

「Azure、SAP S/4HANAいずれの構築も当社には初めての経験であり、『仮想マシンはどのグレードが適しているのか』『リソースを最適に運用するにはどういったしくみが必要か』『セキュアな接続を担保するためにはプライベートクラウドとAzureをどう接続すればいいか』など、疑問を1つずつ解消していかねばなりませんでした。専任の技術者をつけていただくなど、マイクロソフトから手厚く迅速なサポートを受けたおかげで、疑問を解消しながらスムーズに作業を進めることができました」

Azure上でSAP S/4HANAの本番環境の稼動も構想

SAP S/4HANAの移行プロジェクトは2018年5月現在、順調に進行している。「パブリッククラウドを実際に利用し、想像以上のスピードで作業が進められることを実感しました。今後、SAP S/4HANAの本番環境をAzureで運用することもあるかもしれません。また、新たな周辺システムをAzureで展開するという選択肢もあるでしょう」(吉田氏)

Azureの検討に際して、九州電力ではマイクロソフトのデータセンターの見学も実施。吉田氏は強固なポリシーのもと、運用管理がなされていると体感できたと高い信頼性、SLAを評価する一方、メンテナンスなどのシステム停止がコントロールできないことを指摘。この点が、SAP S/4HANAの本番環境を稼動する条件になると小島氏は語る。

「財務管理を司るSAP S/4HANAが停止した場合、業務遅延や支払漏れなどの可能性があります。もしシステム停止をコントロールできるのであれば、本番環境での適用も検討できるでしょう。当社でも開発検証環境やDR 環境の運用を通じて、Azureの信頼性を見極めていきたいと思っています」

電力市場が大きく変化しつつある中、九州電力ではSAP S/4HANA移行を1つの切り口とすることによって、業界におけるプレゼンスをより高めようとしている。

システム概要図

新経理システム構築プロジェクト システム構成イメージ

会社概要

九州電力株式会社

設立:昭和26年5月
資本金:2,373億円(平成30年3月31日現在)
売上高(連結):7,003億9,100万円(平成30年3月31日現在)
従業員数(連結):13,022名(平成30年3月31日現在)
事業内容:九州を中心とするエネルギー供給事業
https://www.kyuden.co.jp/

パートナー企業

日本マイクロソフト株式会社
日本マイクロソフト株式会社

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