- 株式会社ニコン
- 生産拠点の可視性、グローバル競争力を強化する
「生産拠点向け汎用基幹業務システム」を推進 -
映像・精機・インストルメンツの3つの事業領域を中心に、世界へ向けたブランドを創造し続ける株式会社ニコン。その経営力と生産力のさらなる強化へ向けて、同社では現在、「生産拠点向け汎用基幹業務システム」という構想のもとに、国内外の事業部・関連会社を統合する基幹システムの構築に取り組んでいる。
経営と内部統制の課題を克服する「生産拠点向け汎用基幹業務システム」構想

坂口 洋哉氏
株式会社ニコン
システム本部 情報システム部
第二システム課 マネジャー
ニコンの生産拠点においては、10年以上にわたって部門最適の観点から生産管理・財務会計・在庫管理・原価計算などのシステムが個別に構築されてきた。そのため情報のリアルタイム性、可視性が十分でないことに加え、生産管理システムの老朽化にも直面していた。
そこで同社では、ITガバナンスの確立、各種法規制への対応、保守効率性なども踏まえて、すでに財務会計システムとしてニコングループの大部分で採用され、生産業務に必要なモジュールが統合されているSAP ERPをベースに「生産拠点向け汎用基幹業務システム」の構築を決断した。プロジェクトを推進している同社のシステム本部 情報システム部 第二システム課 マネジャーの坂口洋哉氏は、「生産拠点向け汎用基幹業務システム」の全体構想について次のように語る。
「まずは、経営情報を可視化できる仕組みでなくてはならないという前提がありました。そのためには当然、高いデータ精度とリアルタイム性が求められます。また、グローバル調達はすでに必須要件となりつつありますから、海外拠点での展開を考えると多言語・多通貨対応ということも重要なポイントです。さらには海外の生産拠点において政情不安や災害などが起きた場合のリスクを考慮して、その際に他社で分散生産できる体制も築きたいと考えました。同時に分社化やM&Aにも速やかに対応できるシステムとなるよう、汎用性にもこだわりました。これらの要件を総合した結果、SAP ERPを核に構築していくことが最善策だと判断しました」。
上流工程の拠点を皮切りにシステムを水平展開
ニコンのプロジェクトは2008年10月にキックオフした。すでに2009年10月、グループ会社である光ガラス株式会社において本稼働している。最初の導入ターゲットに光ガラス社が選ばれたのは、データの精度向上と可視化の優先度が高かったことのほかに、システム全体構想に基づく理由があった。ニコンの製品工程は、原料をもとにレンズの原型を製造する材料加工、レンズを研磨して機能を持たせる部品加工、レンズを使って製品化する組立加工の3つに区分される。最も上流工程である材料加工を担う光ガラス社から始めることにより、システム構築のロジックが組み立てやすいという発想からだ。光ガラス社で導入したシステムをテンプレートとして、それぞれの業態に必要な機能を付加しながら、他の拠点に水平展開していくアプローチが採用された。
プロジェクトの体制としては、ニコンのシステム本部が企画立案と統制を行い、開発は同社の情報子会社である株式会社ニコンシステムが担当。コンサルティングを含めた導入パートナーとして、製造業において数多くのSAP ERP導入実績を有し、特に生産管理システム(PPモジュール)に精通する東洋ビジネスエンジニアリング株式会社(B-EN-G)に支援を依頼した。B-EN-Gは以前、ニコンのアジア・パシフィックの海外販社6社にSAP ERPを導入した実績があり、今後ニコンが導入対象としている中国・タイなど、各国の商習慣に対応したアドオン開発向けのテンプレートを用意していることも評価ポイントとなった。
B-EN-Gの豊富な経験がシステム構築に真価を発揮
実際のプロジェクトは、プロジェクト準備、ビジネス設計、実現化という3つのフェーズに大別される。プロジェクト準備フェーズでは、目標設定や現状調査を行うとともに、標準化・汎用化を想定したシステム機能整備方針を策定。ここでは、(1)基本業務プロセスにおいては、SAP ERPの標準機能を採用することで、システム機能の基盤を構築する(モディフィケーションは行わない)、(2)事業全体の独自性や競争優位に貢献する要件への対応として、ニコン標準機能をアドオン開発、追加機能開発で対応する、(3)各拠点の個別要件については事業貢献、競争力確保の観点から、内容を精査した上で拠点個別対応を認めるといった方針が確認された。
ビジネス設計フェーズでは、拠点に対応した要件定義を実施。同時にB-EN-GのアドバイスのもとにSAP ERPにおける生産管理と他モジュールとの連携ロジックを習得しながら、To-Be(あるべき姿)の設計を行っていった。
さらに実現化フェーズでは、画面を確認しながらFit&Gap分析を行い、ニコン標準機能に関するアドオン開発を実施。それを踏まえて、検証・テスト(結合テスト・統合テスト)・データ移行・エンドユーザー教育を短期間で実施している。
「ビジネス設計フェーズ、実現化フェーズともに、B-EN-Gが果たした役割は大きかったと思います。たとえば、ビジネス設計フェーズのTo-Be設計は、本来ユーザー側で実施することですが、B-EN-G側から業務シナリオや業務フローの提案を受けたので、確認作業が非常にスムーズに進みました。また、実現化フェーズの最終段階にはユーザーの負荷が高くなりましたが、B-EN-Gがテストシナリオやトレーニングシナリオを用意し、手厚くサポートしてくれました」(坂口氏)
製造工程の作業指示および実績管理を行うMESの領域は、B-EN-Gの提案により株式会社NTTデータ イントラマートの「intra-mart」を採用し、これをフレームワークにJava言語によりスクラッチ開発が行われた。その際もMESとSAP ERPとの連携をはじめ、業務案件の実装に向けて、B-EN-Gがさまざまな支援を行っている。
原価精度が大幅に向上し、在庫金額も削減
システムの本稼働を開始した光ガラス社では、すでに確かな効果が表れつつある。まず、生産状況の可視化が実現できた。重要な管理要素である製造工程の品質情報、実績情報がSAP ERPならびにintra-mart上に確実に格納されるようになったため、後工程に対する迅速な対応が可能となり、生産性と業務の確実性が向上した。
また、材料加工を主業務とする光ガラス社では、原料をどれだけ効率的に使うことができるかを意味する「収率」と個々の加工工程を勘案して合理的と考えられる「加工係数」を導き出すことが不可欠となる。これらについてもSAP ERP内で吸収できる仕組みを実装することができた。
さらに、汎用生産管理を前提とした新しい業務プロセスが再構築され、業務ルールも定義されたため、業務における責任の所在が明確になった。これに付随して、承認プロセス、権限設定が明確化されたことにより、コンプライアンスも担保された。
もちろん、SAP ERPにより、生産・調達・原価・会計が統合された効果も見逃せない。特に統合されたデータを用いて、製品別実際原価計算を行うことで、原価精度が大幅に向上した。同時に在庫金額も削減されている。さらには販売・生産・調達にかかわる取引情報が会計情報に自動仕訳されたことにより、決算情報の正確性が担保されるとともに、決算時の作業負荷も軽減されたという。
「最終的な目標は、各事業において精度の高い情報を活用し、競争優位基盤を築いていくことに他なりません。その意味で、経営情報においても製品別損益をはじめとする各種指標で定量的な分析がリアルタイムにできるようになり、販売戦略、原価低減策などの意思決定を迅速に行えるようになった意義は大きいと実感しています。今後は、グローバルも含めた導入拠点の拡大により、ニコングループ全体で経営の可視性を高めることで、さらなる競争力強化につなげていきたいと考えています」(坂口氏)
今後、新たな「生産拠点向け汎用基幹業務システム」がニコンの各生産拠点に展開されていくなかで、その価値はますます高まっていくに違いない。
導入企業プロフィール
本社:東京都千代田区
設立:1917年7月
資本金:654億7,500万円(2010年3月末現在)
事業概要:光学機械器具の製造、ならびに販売
http://www.nikon.co.jp/









